twitterであげていたおはなし。3

□黙っていればの国見ちゃん、だった話。
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色白で細身で、端正な顔立ちをした彼のことを「お人形みたい」と評した友人。なるほど確かに、と納得してそろりと盗み見たところでばちりと視線が合わさる。

にこりともせず、彼は自分の席に戻ってすぐに机に突っ伏した。

授業中うっつらうっつら寝かけている、もしくは完全に寝ているのを何度か見かけたけど『寝る子は育つ』という言葉にこれほど頷いたことはないだろう。細身とは言え曲がりなりにも男子。それなりにかさのある長い体を折りたたみ窮屈そうにうつ伏せる姿は少々滑稽でもある。

同じクラスになって数ヶ月が経つけれど、彼とは一言も話したことはない。高校1年生ともなればやんちゃで騒がしい盛りだろうというのに、彼はどこか冷めた態度で口数が少なく、他の男子とは明らかに違うオーラを放っている。さっき言った見た目のつくりに加え、強豪バレー部に1年生ながらレギュラー入りしているという肩書きがくっついたことで余計にハードルが上がり、なんだか気やすく話しかけられない存在になっていた。


放課後、教室に残って日直日誌を書いているとガラッという音。顔を上げると教室前方の扉が開いていて、そこには制服姿の国見くん。この時間ならとっくに部活は始まっているはずなのに…なぜここにいるのだろう。

この前と同じように目が合ってしまい気まずく思ってそらすと、足音がどんどん近づいてくる。ガタッという椅子を引く音が至近距離で聞こえて、まさかと思い音のした方向…左を向くと、隣の席にうつ伏せている彼。腕の間からわずかに見える顔、そこにある目はこちらを向いたままだ。

あなたの席、そこじゃないよね…?

なんて言えるはずもなく、わたしは視線を彼から日誌へと移した。早く終わらせてこの何とも形容しがたい空気から抜け出したい。その一心で黙々と手を進めるけれど、目の端にちらちらと映るのは先程と変わらない視線を向けてくる彼。緊張して手が思うように動かない。

カラン。

床に落としてしまったシャーペンを拾おうと横着して手だけを伸ばす。すると机の上に置いていた左腕がずるっと滑り、わたしは椅子から落ちてしまった。

しーんと静まり返った中、体を起こし立ち上がろうとすると

ゴンッ。

机の角に思い切り頭をぶつけた。鈍い音がぐわんぐわんと脳内に響いて、頭には痛みが走る。しかも今の衝撃で机上にあった日誌とペンケースが落ちた。こんなことってそうそう起こらないと思うんだけど。今日は厄日なのか、なんなのか。自分のどんくささとツイてなさを呪いたい、なんて思っていたら隣から想像もしない声が漏れた。
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