金国♀シリーズ

□Vol.2
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淡いピンク色がすっかり消え去り、教室の窓から見える景色が緑一色になった5月。

ようやく授業にも慣れ、生活のリズムができてきた。でも、人見知りという訳ではないけれどみんなとワイワイ騒ぐタイプではないわたし。休み時間は席にずっといるし、昼休みは図書室や自習室にいることが多い。だからきっと、クラス内では浮いた存在なのだろうなと思っている。だって、一人は静かだし誰にも干渉されなくて楽だもの。友達がいらない、欲しくないわけではない。

でも、女の子特有の面倒くささみたいなものは中学の頃から感じている。

誰かが一緒でないと何もできない、常にそばに誰かいないと不安、どこかのグループに属している安心感を大切にするあまり上辺だけのつきあいなのに親友ぶったり。わたしはそこまでして隣に誰かいなくてもいい。委員会だのちょっとした用事で必要であれば誰とでも話すつもりでいる。人と接するのってパワーがいるから、それ以外は省エネで身軽にやっていきたいという考え方なんだよね。



部活には入っていないから、毎日放課後はまっすぐ家に帰る。慣れたとは言え正直新生活というのは気が張るし、家に帰って早く寝たい…ふかふかのベッドに思いを馳せつついつも通り体育館の脇を抜け校門に向かおうとしたら、

「国見さん、だよね?」

背後から名前を呼ばれた。振り向くと見たことのない男子生徒がわたしに微笑みかけている。ちらっと足元に目をやると履き潰された革靴が目に入る。多分…この彼はおそらく上級生。

「…何ですか?」
「ああ、そんな警戒しないでよ。俺、サッカー部の2年なんだけど」
「はい…?」
「新入生に可愛い子いるなーって思ってて。君のこと見てたんだよね。彼氏いる?」
「…急に何なんですか?」
「クールな子なんだね。でもそういう子嫌いじゃないんだな。ねえ、よかったら俺とつきあわない?」
「結構です」

冬のあの日、金田一を断ったよりも更にすっぱりと、なおかつ2文字減らして返した。

でも相手は上級生だし、男だし、ということで…気づいたらじりじりと体育館側に追い詰められていて、ついに固い壁が背中についた。眼前十数センチに迫った顔は、決して整っていないわけではない。女の子の友達もたくさんいそうだし、明るい人のような気がする。でもさっきの軽薄そうな口調といい、今こうして初対面なのに逃げ場をなくされていることを考えると、どう転んでもわたしはこの人とつきあえないのだ。というか、つきあいたくない。

「あの、困ります…」
「いいじゃん、彼氏いないなら」
「いや、です…!」
「へぇ、新入生なのに断んの?俺一応、サッカー部の次期エースで結構有名なんだけど…それでも?」

権力を振りかざして威張ってくる人は苦手だ。何が次期エースだ。本当にエースになるような人なら、今頃とっくにジャージや練習着に着替えてグラウンドにいるでしょうが。自称エースの勘違い野郎が…とふつふつと静かな怒りが沸いてきたその時。
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