金国♀シリーズ

□Vol.4
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「次、何だっけ〜?」
「古典だよ」

入学して最初の定期試験を終え、教室はほのぼのとした空気が流れている。そして今の会話を聞いたわたしはしまった…と頭を抱えた。解放感からか、うっかり古典の教科書を忘れていることに気づいたから。

隣の人に見せてもらってもいいのだけれど、あいにくわたしは一番廊下側。唯一の隣の席である男の子は試験疲れからか風邪で休んでいる。机を一列分移動して見せてもらうのは気がひけるし…わたしは意を決して席を立った。


隣の教室、1年5組を扉の外から覗き込む。休み時間は短いし、一番近いここで借りるのが効率がよい。となれば…頭に真っ先に浮かんだのが金田一の存在だった。 試験期間でみんな必死だったからか、例の噂を耳にすることはなくなった。だからもういいだろうって思って。

いた。

一番後ろの席で、次の授業の支度のためか机の中をガサゴソあさっている。幸いにも周りにこの前みたいに友達はいない。わたしは後ろ扉へと素早く移動して、ちょうど教室に入ろうとしていた生徒の後ろにくっつくようにし、5組への侵入に成功した。

そろりそろりと近づいて真横に立つけど、なぜか全く気づいていない。机に手を伸ばしトントンと軽く叩いた。顔を上げた金田一は目を丸くしている。

「ん…?うわっ!くっ、にみ…!?」
「おはよう」
「ちょっ、何でここに!?」
「声おっきいよ」
「悪い悪い、あまりにもびっくりして…で、どうしたんだ?」
「実はね」

事情を話すと金田一は机の中から古典の教科書を探し当てた。この春から使い始めたはずなのに既にページの端がよれてるのは、机の中に無造作に突っ込んだりしてるからだろうな。裏表紙に達筆とは言えない字体で書いてある名前を見てふふっと笑ってしまった。

「何だよ…急に」
「何でもない」

目的の物はゲットしたし自分の教室に戻ろうとしたその時。
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