金国♀シリーズ
□Vol.8
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バレーは体育の授業でかじったくらい。なんとなくのルールはわかっているつもりだった。けどやっぱり本格的な部活となると更に詳しい用語が出てくるし、青城ならではの慣例的なものもあってまだまだわからないことだらけだ。
おとなしい、もよく言われるけど親しくなった友達には「ぼーっとしててやる気がなさそう」ってよく言われる。もしかしたらバレー部のみなさんにもそう思われているかもしれない。でも一応わたしなりに頑張ってはいるつもり。
バレー部用にと準備したノート、入部して数日だけれど既に埋まっている数ページ。部活中に気づいたことや金田一と話していて知ったバレー部のことを書き留めている。本当ならみなさんの前で必死にメモを取る姿こそ新人らしく可愛げがあるのかもしれないけれど、わたしはガムシャラすぎてもなぁとその場では相槌をうつだけで後で思い出しながら記録していた。
「あの、すみません」
「ん?どうしたの」
「なになに?俺が教えようか」
「バッカ、俺に聞いてくれたんだろ!邪魔すんな」
「国見さん、こいつらもめてるし俺が代わりに…」
「来んなよ〜!」
傍らにいた先輩の控え部員に質問をしようとすると、他の部員がわらわらと来てこんな風に小競り合いをする。人によってはその逆で、あまり目を合わせてくれずもじもじされたり、お前が教えろよ、なんて目の前で押しつけあいが始まることもあった。
「何かやれることあります?」
そう声をかけても、
「いいのいいの、俺らでやっとくから」
「でも、仕事…」
「人数いるし平気だから」
……なんか、違う。
部活、しかもマネージャーとは言え運動部に入るなんて4月のわたしからは想像できない。くたくたになってしまうのは嫌だったはずなのに、金田一というきっかけによってあっけなく、しかも学校でも一二を争う強豪部活に入ってしまった。でも、勇気をだして飛び込んだ世界はまだ居心地がいいとは言えない。
他人にうまく甘えられない、そして人懐っこいとは言えないわたしの性格もあるのかもしれないけど、部に馴染めるのは、お姫様扱いやお客さん扱いがなくなるのは…いつなんだろうか。そんなモヤモヤを抱え始めていた。