twitterであげていたおはなし。

□君だけの花になりたくて
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「おはよう!」

教室の入口に現れた彼は小さく、おはよ、とつぶやき自分の席に向かった。
今日も話せた。たった一言で、わたしの世界は鮮やかに色づく。


入学して同じクラスになり、恋に落ちるのにそう時間はかからなかった。
クラスの皆が順番に自己紹介をしていくなか、
あまり大きくない低めの声で自分のことを淡々と話す彼。
あるアーティストを好きだと言った。

わたしは名前しかわからなかったけれど、なんとなく彼と仲良くなりたいと思い曲を調べたら
奇跡的に聴いたことがある曲がいくつかあった。
その微力な武器を手に、後日勇気を出して話しかけた。

「月島くん、わたしもあのアーティスト好きなんだよね」
「…へぇ、そうなの?」

知ったばかりなのに、好き、と誇張してしまった。
マニアックな話をされたらついていけないぞとヒヤヒヤしていたら
彼から思わぬ提案があった。

「じゃあ、音源貸そうか?」

即座に頷くと、明日持ってくるね、と言ってくるりと背を向け
山口くんと共にバレー部の練習に向かっていった。


翌日、持ってきてくれた音源と共に彼はこんな言葉を残した。
「最後から2番目の曲が、僕が一番好きなヤツ」
そう言われたら聴くしかない。
音源をプレイヤーに入れると、順番を無視して最後から2番目から聴いた。
そしてその歌詞に心奪われた。


自分は、花だと。
そして、たくさんの人が目にするような野山ではなく
たった一人の愛する人の庭で咲くのだ、と。

わたしも、そうなれればいいなと思った。
そして彼のことが頭に浮かんだ瞬間、自分の恋心の芽生えに気づく。

月島くんの庭には、もう花が咲いていますか。
もし何も咲いていなければ、そこに根をはっても、いいですか。
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