twitterであげていたおはなし。

□おやすみ、と言いたくて
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きっと疲れてるんだと思う。
根詰めすぎてるって自覚はちゃんとある。
でもセンター試験まで3ヶ月を切った今、1分1秒だって惜しい。


昨日も遅くまで、参考書とにらめっこしていた。
寝る直前まで勉強していると、変に頭が冴えてしまい寝つけないことがある。
昨日はまさにそれ。
寝起きの頭はぼんやりしている。
朝練がない彼と過ごせる貴重な朝のひとときを、盛大なあくびがぶち壊した。

「…また夜ふかししていたんでしょう?」

ジロッと送られた視線が痛い。
通学路に吹きすさぶ、落ち葉を撒き散らす風よりも冷ややかだ。

「テレビとかじゃないよ!ちゃんと、勉強してたんだってば」
「…当たり前です。でも、体を壊したら元も子もないってこと、わかりますか」

母親のように的確な指摘に返す言葉もない。
彼のことを強く年下だって意識したことがないのは、本当にしっかりしているから。
それに高校生の1歳差なんて傍目にはわからない。

「ちゃんと睡眠時間も確保してください。
それにもし寝坊されたら…こうやって一緒に登校することもできなくなってしまいますから」

最後の方はちょっともぞもぞと小さな声になったけど、ちゃんと聞こえてるよ。
早寝早起きして、君との時間を無駄にしないようにしないとね。
学校に近づく一歩は、君と過ごす時間が減る一歩。
そんな切ない気分を吹き飛ばしてくれるのは、さりげなく握られた手。


授業が終わるとまっすぐ帰る。
でも、どうしてもこれだけは欠かせないんだ。
体育館に続く廊下で彼を待ち伏せる。
ジャージに着替え、シューズを片手にした彼が姿を見せたから、ひらひらと手を振ってみた。

「こんなとこにいる時間、あるんですか」
「いいじゃん。彼氏様を部活に送り出すくらいは、さ」

そう言うと、呆れた、でもうれしさを隠しきれない顔つきになった。
大人びているくせにたまにこんな顔を見せるから、たまらない。
本人はあまり気に入っていないというくせっ毛に手を伸ばした。
わたしはこのふんわり感がとてもすき。
そして、頑張れよってぐっしゃぐしゃに撫で回す。
犬じゃないんですから、とぶつぶつ言いながら髪の毛を直す彼を残して、家路を急ぐ。

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