twitterであげていたおはなし。

□押してダメなら、押してみる
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それからは、毎度とはいかないけど一日に何回か、3年生の教室のある廊下に足を運んでいる。
3年4組は進学クラス。
先輩、やっぱり頭いいんだな。

制服に着られてるようなわたし。
もしかしたら、冷ややかな視線や嘲笑を浴びせられるんじゃないかなって覚悟はしてた。
でも、日に何度も通っていても特に視線は気にならない。
みなさん、大人だからこんなガキのことは眼中にないのかも。

先輩が一人になった時が、チャンス。
トイレ行ってくる、と仲間に告げて廊下に出てきた。

「先輩、こんにちは」
「あー、この前の」

よしよし、ちゃんと覚え続けてもらえてる。
これだけでも十分だ。

「先輩の顔、見たくって。挨拶できただけでもうれしいです。じゃあ…」

それだけ言い残して教室に戻る。
トイレ行くって言ってたし、わたしが授業に遅れてしまって
要注意人物になってしまって、もし何かしらでそれが先輩に伝わったら嫌だから。
なんて考えすぎだけど。
先輩の耳に入るなら、優秀でいい子だって思われたい。
だから、勉強にも一層身が入るようになった。


廊下での短いおしゃべり。
何度か挨拶を交わすうちに、会話は長くなっていく。

今日は天気いいね。
もう半袖、着てるんだ。
次の授業は、何?
部活は何やっているの?
どこの中学出身?

先輩がわたしにかける言葉が、単なる呼び掛けから質問になっていくのがうれしい。
わたしに少しでも興味、持ってくれたのかな。だったらいいな。
じわじわと押し寄せてきた想いは、もう堰止められない。
決壊しそうなほど、募りに募った想い。



「先輩、すきです」

昼休みについに告げた。
二度目に会った時も「大好き」って言ったけど
今の「すきです」には先輩を知って更に増した想いが加わってる。

でも先輩は首を縦に振らない。

「気持ちは嬉しいけど」

ああ、それも、あの時に聞いた言葉だ。
先輩の中のわたしは、あの時と同じままなんですか。

「時間がないんです。先輩、卒業しちゃうから。
彼女がいないなら、できるまででもいいから、わたしをそばにいさせてください」

みじめな言葉が出てしまう。
都合のいい女、穴埋めだって構わないから…選んでほしい。

「ダメだよ、そんなこと言っちゃ。…とにかく、ごめん。ダメなんだ」

眉をひそめ、苛立った表情で廊下から教室に戻る先輩。
後ろ姿は見ずに、わたしはサッと自分の教室に向かう。

小さい頃、ダメって言われるほど危ない場所で遊んでみたくなったこと
先輩はないんですか?
触っちゃダメ、入っちゃダメはわたしにはただの煽り文句。
わたしの炎が今ので燃え盛ったこと、先輩は気づいてない。

先輩に触りたいし、先輩の心に入り込みたいし、先輩の腕の中にいたい。
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