twitterであげていたおはなし。

□友達でも油断しないで
1ページ/2ページ

シャツの袖から入ってくる風が、熱気を帯びてきた。
やわらかだった春の日差しはとっくにどこかに消えて、
もう手の届くところ、指先数センチに夏の背中がある。

高校最後の夏。
もちろん受験があるから余裕ではいられないけど、
それでも今年の夏は今までの17回とは明らかに違う意味を持ってる。

彼氏ができたから。
クラスは違うけど、同い年の。
1年の時に友達同士の繋がりで意気投合し、仲良しの男友達だった。
そしてついこの前の冬、告白された。
わたしも彼のことはいいなと思っていたし、あっさりOK。
本当の春の訪れとともにやってきた、初めての恋人。


ホームルームの時に返却された模試の結果を手に、
教室でみんなとだらだら過ごしていた。
部活の引退前に受けたものだから、ほとんどの人はまだかんばしくない結果。
引退して勉強一本だな、これから本腰を入れてやるか、という雰囲気だ。

その中に一人、わたしが中学から一緒の男子がいた。
彼はわたしの結果をずいと覗き込んで、英語は俺が上だな、とか話しかけてくる。
だったら理系は負けないよ、なんて張り合って、笑い合っていると遠くに感じる視線。

廊下の窓から見えた、枯草色のつんつんはねた髪型は間違いなく…
衛輔だ。
こうやってクラスに迎えに来ることはよくあるけど、いつもなら元気よく声、かけてくれるのに。
今日は見つめたまま表情を動かさない。

ここで考えても仕方ないからみんなに別れを告げ、
鞄を持って廊下に飛び出した。

「今日は部活ないんだ?」
「…ああ」

口が重そうだ。
もしかして…返ってきた模試の結果、あんまりよくなかったのかな。
なんて思ってたら、強めの口調で叩きつけられた言葉。


「あいつ。前、同じ中学とか言ってたよね。さっきのくっつきすぎじゃない」

ああ、これはヤキモチだ。
つきあって数ヶ月、こんなふうにあからさまな態度をとられたのは初めてかもしれない。

「ちょっと用紙を覗き込んだだけだし、なんともない普通の友達だよ?」
「お前が友達って思ってても、向こうは違うかもしれないだろ?油断するなよ」

クラスの人には、衛輔とつきあってることは大っぴらに宣言していない。
多分、さっき迎えに来たのを見て気づいた人もいたんじゃないかな。
そんなに怒らなくてもいいのに、と思ったけどあまりにも機嫌が悪そうだったから
そっと、ごめんね、って言って、腕を掴んだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ