twitterであげていたおはなし。

□友達でも油断しないで
2ページ/2ページ

言葉もないまま校舎を出て、とぼとぼといつもの帰り道を歩く。
昇降口で靴を履くために腕を離してから、ふたりの距離は前後へと変わってしまった。

やだな。

模試の結果がいまひとつだったことより、このたった数メートルがわたしに重くのしかかる。
カップルらしいことはそんなにできていないけれど
もうすぐ夏休みだし…あ、衛輔は部活もあるけど。
でも休みの日にはどっか行けたらいいな、なんて思ってた。
衛輔の誕生日だってあるし。

男女の友情は成立しないって言う人もいるけど、わたしには少なくとも当てはまらない。
衛輔とは友達から恋人になったけれど、クラスの彼とは本当に、ずっといい友達でやってきた。
こんな空気になるなら、男友達を切り捨てるか、衛輔と別れるしかないのかな。
天秤にかけるなんて本当は嫌だな…

なんて思いながら歩いていたら、いつのまにか彼が立ち止まっていて
背中がすぐ目の前にあった。

「ごめん、俺、みっともなかった」

昼間の熱を吸い取ったアスファルトの上、静かな一言。
振り返った彼は苦々しい顔をしてた。

「信じてないわけじゃない。でも、俺らだって元は友達だっただろ。
もしあいつがお前のことをずっと想ってたりしたら…年月では敵わないんだなって思って」

年月なんて関係ないし、わたしがすきなのは…

口を開く前に行き場をなくしていた手を引かれ、バランスを崩した体は彼に寄りかかる形に。
背中に腕を回され、腕ごと押さえ込んでぎゅうぎゅうに締めつけられた。
両腕が彼の背中に伸ばせないほど。
わたしの視界には誰も入っていないけれど、誰かに見られたらどうしよう。

戸惑っている間に、唇が完全に塞がれる。
この、狭くて大きい都会の片隅で、ふたりが繋がった。
彼の唇から時折もれる吐息が、全身を熱くさせる。

人目をはばからずじっくりと口づけを交わした後、
火照り気味の顔で彼が言う。

「『友達』から始まった俺らだけど、こんな『恋人』らしいこと、したっていいよな。
いつまでも、友達だったからって俺にも油断しないでほしい。
また、こういうこと、するだろうし…」

こういう行動や言動に触れると、やっぱり彼の方が何枚も上手だ、って思う。
くやしいけど全然敵わない。

「ドキドキしてよ、俺に。もっと。」

…十分、心臓に悪いこと、言われたりされたりしてるんだけど。
とは言い返せずに、ただただ頬を染めて彼を見つめると、ヒマワリのような笑顔が咲く。
やっぱり、この顔が一番すきだ。

「ってことで。夏休みはふたりで出かけような。
ちょっと遠くに。一日中お前といる日、欲しいんだ」


いくつ思い出ができるのか、君以上に楽しみにしてるわたしが、ここにいるよ。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ