twitterであげていたおはなし。2

□すきにして、いいよ
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変わらない喜び、変わっていく喜び。
どちらもあるのが、恋だと思う。


高校時代、よく平日休日問わず遊びに行っていた縁下家。
長女とわたしは中学からの仲で、いわゆる親友。
夕食をごちそうになったり、家族に混ざってテレビを見たり。
その中に、力くんがいた。
当時はまだ中学生。
学ランに着られているようだった少年は、遠慮がちに姉の部屋に顔を出し
「ケーキとお茶、持ってきたけど」と言うような子だった。
平日の夜や、休日で彼の部活がない時しか会わなかったけど
会った時は品のいい笑顔で迎えてくれた。

姉がお世話になっています。
全然、うるさくないです。賑やかでいいじゃないですか。
家族が増えたみたいで、楽しいな。

反抗期があったのかさえ疑問に思うほど”イイコ”だった。
友達に「よくできた弟くんだね。将来有望じゃん」と言うと
「そっかな?そんならあんたがもらってやってよ」と豪快に笑い飛ばしてきた。
…まさか数年後、本当にもらってしまうことになるなんて。


その日は唐突に訪れた。
友達が、学校に忘れ物をしたから、と部屋にわたしを置いて出て行った時。
雑誌をめくりながら過ごしていたら、部屋をノックする音。
お母さんかなと思って、はーいと軽く返事をするけど、ドアは開かない。
立ち上がってドアを開けに行くと、部活帰りの力くんが直立不動でそこにいた。

「おお、力くん!おかえり〜」
「…こんにちは」
「どうしたの?なんか元気ないね。部活、疲れた?」
「いえ、そんなことないです」

いつも落ち着いた口調だけど、今日はなんか元気が感じられない。
弟のように可愛がっていた彼が、とても心配だった。

「わたしでよければ、話聞くけど?友達にも家族にも言いづらいなら、さ」
「…」

黙ったままだけれど、部屋の中にずいずいと入っていたから
わたしもドアを閉め、部屋の中央に戻った。

「あの…」

遠慮がちな一言がやっと放たれた。
よしよし、お姉さんが何でも聞いてあげるよ、なんて少しワクワクして次の言葉を待っていたら。

「あなたが、すきなんです」

目が点になる。
ここにはふたりきり…ということは。
わたしは、男子中学生(しかも友達の弟)に告白されたってことなのか。
ここで傷つけてしまったら遊びにくるのが気まずくなるし、どうしたらいいのか…

わたしの沈黙を、彼はなんとも大人な一言で打ち破った。

「中学生なんて、高校生から見たら子供、ですよね。
高校生になったらもう一度告白させてください」

それだけ言うと、スタスタと部屋を出て行ってしまった。
後から戻ってきた友達に、あんた熱ある?顔赤いよと心配されるぐらい
頬の赤みはなかなか消えなかったみたい。
あのまっすぐな瞳も、脳裏から離れなかった。
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