twitterであげていたおはなし。2

□一度フラレたけど国見ちゃんを諦められない子のお話。
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強豪なだけあって、マネージャーの仕事も大変かなと思ったら
監督さんが生徒の自主性を重んじる方針のため、みんな自発的によく動く。
部員はたくさんいるし、積極的に裏方作業をするのだ。
だから、女子マネージャーが今までいなくても平気だったのか…

バレーに関して素人なのに、仕事もできなかったらただのお荷物になってしまう。
そんな思いから、同級生や先輩の控え部員に積極的に教えを乞うことにした。
基本的なルール、練習中のデータ集計、用具の整理や備品の注文など。
男だらけの中で声を出し手を挙げるのはとても勇気のいることだったけれど、
自分がここにいる意味を感じるため、全てをかなぐり捨てて取り組んだ。
真っ白だったジャージが日々うっすらと汚れたりヨレたりしていくのが、心の支えだった。


入部して1ヶ月ちょっと、インターハイ予選が目前に迫ったある土曜日。
4月に練習試合をした烏野と、再び手合わせをすることになった。
前回わたしは、所属する委員会の仕事のため部活には参加できなかったから
烏野の面々を見るのは初めて。
前回は主将の及川さんが終盤からの参加だったこともあって負けたらしい。
相当強いところなんだな、とわくわくしていたら。

目の前の廊下を通った黒いジャージ集団の中に、よく見知った顔がいた。
とっさに声をかける。

「影山くん…?」

振り返った彼は中学の同級生。
国見くん達と同じバレー部だから、同じ進路かなと思っていたら…烏野だったのか。
彼とは3年生の時に同じクラスで、結構話したこともある。
ぶっきらぼうで人を寄せつけない雰囲気もあったけれど、じっくり話してみると面白い人。

「久しぶりだな。お前、マネージャーやってるんだ?」
「うん…まあね。聞いたよ、前回うちに勝ったって」
「あー…及川さんがほとんどいなかったからな。ギリギリ、なんとか」

卒業式以来の再会で会話が弾む。
敵とはいえ、同級生が試合に出るのを見られるのは純粋にうれしい。
と思っていたら、後ろから肩をガッと掴まれた。
それだけでも驚きだったのに、振り返った時に斜め上にあった顔に更に驚いた。

「…久しぶりだな、国見」
「…お前こんなところで無駄話してるなよ、マネの仕事やれ」

ふたりの会話は噛み合っていない。
いやーな空気が流れてて、その中に挟まれていると思うと胸が苦しかった。

「影山くん、引き止めてごめんね。烏野のみなさん行っちゃった…」

わたしの言葉に影山くんはじゃあなと一言残し、背を向け歩いて行った。
一触即発な空気を何とかしなくては、と絞り出した言葉は、どうやら国見くんの機嫌を損ねてしまったみたい。
口をへの字に曲げて眉を寄せている。
ごめんね、と軽く頭を下げ、試合の準備をしにフロアに向かった。
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