twitterであげていたおはなし。2

□買い出し中に赤葦とバッタリする音駒マネのお話。
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「やべー、もうない」
「お前、なくなりそう、って言っておかなかったのかよ…」
「申し訳ないけど…よろしく頼みます」

インハイ予選近いのに大丈夫かな、うちのチームは。

直接言うか部室のメッセージボードに書いておいて、って頼んであるのに。
黒尾はともかく、海や夜久さえも忘れちゃうなんてね…

そんなこんなで、今日は部活を中抜けしている。
部の備品でいくつか切らしているものがあったのだ。
テーピング、冷却スプレー、ドリンクの粉とかまとめて発注をかけたけれど、届くのは明後日らしい。
そこでわたしが臨時用に、スポーツ用品店で調達してくることになった。

1年生、特にリエーフは
「そんじゃ俺!俺行きますってば!荷物持ちでも!」って
真っ先に挙手していたけれども、悲しいかな、その願いは虚しく散る。
「お前はその体力を練習に使おうな」
リエーフ…引きずられていく君のうるんだ瞳は一生忘れない。
安心して、練習に励みたまえ。



都内でも有数の繁華街、I駅にあるスポーツ用品店。
閉店時間まであと30分、なんとか間に合った。
とりあえずテーピングとスプレーをカゴに入れ、店内をうろうろ。
あ、そういえば黒尾が月バリ読みたいって言ってたっけ…
足を雑誌コーナーに踏み入れると、先客がいた。
そしてその先客には、見覚えがあった。

わたしの足音に気付き、雑誌から顔を上げたその人はこちらを見て軽く会釈した。
合宿でいつも一緒になる梟谷の…セッターの子だ。
目が合ったことだし、ちょっと話してみようかな。

「こんばんは」
「どうも…こんばんは」
「梟谷はいつもこれぐらいには部活終わるんだ?早いね」
「いえ、今日体育館が使えないので部活が休みなんです」

制服の着こなし、たたずまい、言葉遣い。
育ちの良さが感じられる子だ。
でも、合宿の時に見た闘志やガッツポーズも印象に残っている。

「うちはまだ部活やってるんだ。この後コレ持って戻るの」
「それは、お疲れさまですね」

閉店を知らせるアナウンスに会話が止まった。
急いで月バリを一冊カゴに入れ、レジに向かおうとすると声がかかる。

「あの、よかったら途中までご一緒しませんか。お荷物、お持ちしますので」

そんな気を遣わなくていいのに、と思ったけど
断るのもなんだし…と最終的にはビニール袋を下げたまま一緒に店を出た。
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