twitterであげていたおはなし。2

□買い出し中に赤葦とバッタリする音駒マネのお話。
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梅雨の途中だけれども、今日はわりかし空気がカラっとしている。
制服のシャツもべたつかず、夜風が気持ちいい。
煌々と電飾が照らす街を、彼と並んで歩き始める。

「赤葦くん、だっけ。家はどこ?」
「うちは音駒の最寄りのSの少し先なんです」
「そうなんだ、じゃあうちに通う方が楽なんだね。うちに来ればよかったのに」

はっきり言って冗談だった。
それなのに彼は、えっ、と小さく声をもらす。

「それは、音駒への勧誘ですか?今からは…できないですね」

真面目に受け取られたことに、不意をつかれ笑ってしまった。
彼は、不思議そうにわたしを見つめ、頭をガシガシと掻いて頬をほんのり染めた。

駅の改札を抜けると、ちょうど停車していた急行列車。
運良く端の二席が空いていたので、並んで座る。
彼はスマホをひとしきりいじって、20分おきか…とかぼそぼそ言っている。
いや、もっと頻繁に来るよ?と言おうと思ったけど、
彼が早々にスマホをしまったのでやめておいた。

「でも…あなたのようなマネージャーさんがいるなら、それもいいかもしれませんね。
音駒のみなさんがすごく頼りにしてて、安心してプレーに専念できてるように思います」

ああ、さっきの話が続いてたのか。
なんて思いつつ、あやうくスルーしそうな意味深な一言。
わたしがいるなら…?
いや、過度に反応するところじゃないな。

「梟谷は、たくさんマネージャーさんいたよね。あのロングヘアの子とか可愛かったな」
「俺は、何事も数より質が大事だと思いますけどね。お一人で頑張ってるじゃないですか」
「それって…梟谷マネの質が悪いみたく聞こえちゃうよ?」
「…あ」

やばい、という顔をした。
さっきまでのクールな顔よりもずっと高校生らしくて好感が持てる。

「今のはちょっとした間違いで…すみません、あの」
「大丈夫、合宿で会った時に言ったりなんてしないよ、安心して」

彼の言葉を遮り、笑ってみせた。
恐縮です、なんて言いながらぺこりと頭を下げる彼。
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