twitterであげていたおはなし。2

□甘えていいんだよ
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駅の改札を出ると、いつもと同じ円柱に寄りかかり
携帯をチェックしている彼が目に入る。

他の学校の制服に身を包んだ女の子が
その姿を見てはひそひそ話。

(いつもいるよね、あの、青城の制服の人)
(彼女待ってるんだよねきっと。超カッコイイもん)

やばい。口元がゆるゆるしてしまうのを必死に抑えた。
本当は全世界に自慢したいくらい、大好きでかっこよくて自慢の人。

あれ、わたしの彼氏なんです。

でもそんなこと言えるほど、美人でもスタイルいいわけでもないから
あまり目立たないようにしているつもりだ。
直線上にいるにも関わらず遠回りして、柱の裏側に行く。
そして背後から、こっそり肩をとんとん。
ビクッと動いたかと思うと慌てて携帯をポケットに突っ込んだ。

「わ!…驚かさないでよ」
「朝から、いかがわしいモノでも見てたんですか?」
「そんなワケないでしょ」

ふたり並んで、バス乗り場へ向かう。
彼の朝練の時間に合わせた早めの登校には、もう慣れた。
朝早い教室で宿題をしたり、ジュースを飲みながらぼんやりするのもなかなかいいもの。
それに、この時間なら生徒も全然いないから、思い切り隣に並んで歩けるんだ。
これこそ、至福のひととき。


横を歩く彼をよく見ると、目の下にうっすらクマができているような。
…気のせいかな?
あと、笑顔ではいるけどなんか疲れてる感じもする。
じっと見ていたら、視線に気づかれた。

「なあに?…俺がかっこいいからってそんな見つめないでよ」
「それはありません」
「なんかお前岩ちゃんに似てきたね」

本当はかっこいい、って思ってる。
でも言うと調子に乗るんだもん。

「及川さん、お疲れですか」

そっと、尋ねてみる。
及川さんはケロッとした顔で明るく答えた。

「そりゃあ、全然疲れてないって言ったらウソになるでしょ。
でもね、せっかくお前と一緒にいられるんだし、変な顔できないよ」

こういうことサラッと言うところ、むかつくけどうれしいです。
でも、彼女なんだから、弱いところ見せてほしいと思うのはわたしだけですか。
年下から言われても、効果ないんですか。
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