twitterであげていたおはなし。2

□失恋したスガさんが復縁を試みるお話。
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積もりに積もった想いを乗せて走る新幹線。
曇った窓ガラスにすーっと指を這わせると刺すような冷たさ。
京都は、東京よりも寒いのだろうか。


結局、ろくに言葉も交わさないまま学び舎を離れた俺たちだった。
俺は東京の大学に進んだ。
宮城を離れたからには、一回りも二周りも成長しなければならないと感じていた。
親からの仕送りは家賃の半額分だけ使い、あとは将来返せるように貯金している。
授業の支障にならない程度に詰め込んだバイト。
その給料で家賃の残りと生活費を賄う日々。
周りはサークルだの飲み会やコンパだのと遊びまわっていたけれど
俺はそういうものを一切遮断して、最低限の人付き合いにとどめた。

心の中心には、彼女しかいないから。

新しい出会いよりも、
未来の彼女との邂逅の方がずっと魅力的だったんだ。

彼女は第一希望だった東京の大学には残念ながら思いが通じず
京都の大学に進学したことをクラスメイトづてに聞いた。
同じ宮城を離れるにしても、東京と京都。
街中で偶然出会うはずもないからこそ、余計に募る想い。



さよならの時から約9ヶ月。
少し強引かもしれないが、行動に移す時がきた。
クリスマスの3日間で行く、冬の京都。
彼女には、京都にいると聞いたことを説明した上で
もし時間が合えば久しぶりに会わないかとメールだけ送っておいた。
LINEだと既読マークがついてしまうのが怖かったから、メール。
読んだかどうかわからない状態でいいから、ただ彼女を待ち続けていたかったんだ。

バイト疲れもあったし新幹線の中で一眠りしようと試みたけど
結局いろんなことを思い出しすぎて、一睡もできなかった。
窓ガラスをこすり外の灰色の風景に目をやる。
暗く寂しく重い冬も、彼女に会えたら色がつくのかな。


東京駅発、のぞみ385号。京都には18:14に着くから。
そう伝えてあったけど、いざ降り立った初めての駅には出口がいろいろあってわからない。
構内にあった地図で確認すると「中央口」に、バス乗り場や京都タワーがあって賑やかそうだ。
中央口、いくか。
そう決めて歩き出していたら、コートのポケットが震えている。
取り出した携帯、画面にはあんなにも想い焦がれていた人の名前が表示されていた。
繋がった相手は静かに、シンプルな第一声を投げかける。

「どのあたりにいるの」

その一言がどんなに恋しかったか。
体中に染み渡らせるようじっくりと余韻を堪能してから、
中央口に向かってる、と言って切った。
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