twitterであげていたおはなし。2

□失恋したスガさんが復縁を試みるお話。
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クリスマスということもあって人が大勢行き交う中、駅を出たところにあった交番。
ここなら見つけてもらえるだろう。
昔、まだ恋人だった頃に「その色好き」と言ってもらえた少し色素の薄い俺の髪。
この髪をどうか、目印に。

数分もしないうちに、まるで昨日も会った友人同士かのように
彼女は「寒いね」と声をかけてきた。
でも、表情は能面のように堅い。
半年以上も見ないうちに彼女は随分と大人っぽくなっていた。
肩をゆうゆうと越えていたロングヘアは今、肩につくかつかないかの長さで揺れている。
そういった彼女の変化をひとつずつ噛み締めていたら、何か食べる?と聞いてきた。
京都っぽいものがすぐに思いつかず迷っていたら
おすすめのラーメン屋さんあるから、いく?と声をかけてくれた。
胸がいっぱいで食べられないかもしれないけど、頷いて彼女についていく。


駅から5分ほど、東の方角に向かって歩いたところにある小さなラーメン屋。
彼女は慣れた様子で2人分の注文をしてくれた。

「店名に”旭”って入ってる。そういや旭、元気でやってるかな」

旭は地元に就職し、町内会チームにも参加している。
そんな昔話を出せば、話も弾むかなと思ったけれど
彼女は俺の目を見て話こそ聞いてくれるが、うん、という相槌以外は話してくれない。
九条ねぎがたっぷりのったラーメンはとてもおいしくて、
さっきは食べられないかもなんて思っていたけれどあっというまに完食した。
…食べていないと、彼女との沈黙に落ち着かないからというのもあったが。


おなかを満たして店を出ると、雪がちらつき始めていた。
かなり暗くなっていて、気温も到着時よりぐっと下がった気がする。
東京の大雪も東北育ちの俺にはまあまあ堪えたが、京都はそれ以上に芯から冷える気がした。
この街で、こんな寒い夜、彼女はどうやってあたたまっているのだろう。

無言の彼女は、店を出るとさらに東に歩みを進めた。
どこを目指してるのか、皆目見当がつかない。
前を歩くベージュのコート。
すぐそこにいるのに、隣にはいけないし引き寄せることもできないなんて。
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