twitterであげていたおはなし。2

□東京合宿で出会った山口と梟谷マネのお話。
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恋って、不思議だ。
毎日同じ24時間なのに、
会えない時間は時計の針の動きがのろくもどかしい。
会っている時間は逆に、針の進みの速さに落胆する。


初めて見る、あの軌道。
ボールは力なく、ネットのこっち側にひっかかり床に落ちる。
でも、声をかけようと思うのに十分な印象をわたしに与えた。

ボールを拾いながらその人に近づく。
まだ体の線も細く弱々しい感じがする、わたしと同じ1年生。

「さっきのサーブ、なんかちょっと違いましたね」
「え?ああ…あれね、ジャンプフローターサーブって言うんだ」

へえ、なんかかっこいい名前だ。
彼はTシャツの袖で汗を拭い、わたしからボールを受け取る。

「練習中で、全然成功できないんだけどね」
「成功したの、見てみたいです」
「じゃあ、頑張らないとなあ」

夏の合同合宿、自主練タイムの一コマ。
そこから数日間見続けていたけれど、ボールがネットを越えることはなかった。
自主練の手伝いが続いたことがきっかけでよく話すようになり、
最終日には互いの連絡先を交換するまでになった。
宮城へ帰っていく彼の背中。
曲がり角で見えなくなるまで、その場を動けなかった。


調子はどうですか。
そんな月並みなメールにも丁寧に答えてくれた。
こっちは朝は少しだけ涼しくなったけど、東京はどう?まだ暑いよね、なんて言われると
距離を感じて胸がきゅっと痛む。
早く同じ場所で、顔を見ながら話したいな、と思ううちに
これは恋なんだって気づく。
二度目の合宿が、彼に会える日が待ち遠しかった。


数週間ぶりというのに、何年も待ち望んでいたような気がする、再会の日。
ジャージ集団の中に元気そうな彼を見つけホッとする。
無事、ここに来てくれた。
それだけでも胸がいっぱいだ。
こっそり手を顔の横に挙げてみたら気づいてくれて、同じように手を挙げてくれた。
どうしよう、そんなことされたら、気が気でない。
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