twitterであげていたおはなし。2

□勘違いしながらも好きな子を守るツッキーのお話。
1ページ/3ページ

たかが一枚、されど一枚。
でもわたしにはすごく意味のある大切な一枚。
ポケットの中にこれがあれば、強くなれる気がした。


違う学校の子がたくさん入り混じった、新しい教室。
少し引っ込み思案なわたしにとって、自分から話しかけるのはとても勇気のいることだった。
偶然出席番号が前後になった彼・山口くんは、
そんなわたしにも”おはよう”の挨拶を欠かさない。

山口くんは休み時間のたびに後ろをくるりと向いて、
今日の天気のこと、さっきの授業のこと、部活のこと。
色んな話題を振りまいてくれた。
つられて笑顔になり、少しずつ会話が弾むように。
おかげで気持ちも大分和んだし、一人で黙って過ごす何倍も楽しかった。

数日後、いつも通り二人で話していたらやってきたのは、メガネで長身の男の子。

「山口。次、移動教室デショ。そろそろ行かないと」
「あ、そうだっけ。ありがとツッキー!」

黙って新たな訪問者を見つめているわたしに、山口くんは意気揚々と紹介する。

「小学校から一緒のツッキーだよ」
「山口うるさい。……月島です、ドーモ」

二人は似た者同士というよりは逆のタイプなのかもしれないけど、
バランスが取れたコンビのように思えた。

月島くんは最初冷たい人ってイメージだったけれども
宿題に苦戦しているわたしを見て、助け舟を出してくれたりと案外親切だった。
そして、山口くんがいない時でもわたしの席に来て軽く会話するようになった。
口数は多くないけれど、ちゃんと話を聞いてくれる。
目をあまり合わせてくれないけど、その分こちらがのんびりと眺める時間を与えてくれる。
何ジロジロ見てるの、なんて言われた時は心臓が止まりそうだったけど。

淡い飴色の髪、メガネの奥にある聡明な瞳、呼びかけてくれる時のちょっと低い声。
全部ひっくるめて、いつのまにか月島くんを”友達”より上の段階に上げていた。
そんなかっこいい彼のことを、クラスの女子がほっとくわけはなく
”近寄りがたいけどカッコイイ”とひそかに人気があることも、女子の雑談から知った。
ライバルは限りなく多いんだと思うと憂鬱になったけど…
時々でも話せている自分はラッキーなんだ、と思った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ