twitterであげていたおはなし。2

□風邪を引いた龍のお見舞いに行くお話。
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「え…?休みなの?」

偶然休み時間に顔を出した1組の教室で、思わぬ知らせを聞いた。
同じバレー部の龍こと田中龍之介が、今日は風邪で欠席しているのだという。
マネージャーだから、部員の体調不良が心配なのは当たり前だけど
部員ってことを除いても、心配なのには変わりない。
だって……好きな人、だから。

放課後、部活開始前に主将の澤村先輩に告げる。

「あの、今日、龍休んでるんです」
「えっ、そうなのか?田中が?」

澤村先輩は驚いて目を丸くしていた。
隣にいた菅原先輩も、へえーと声を上げた。

「なんだろうな、めずらしい」
「気合いで風邪なんか吹っ飛ばしそうだけどな〜アイツは」
「大地もスガも…田中に失礼だろ。
きっとしんどいだろうし、バレーやりたくて仕方ないだろうな…」

東峰先輩はおろおろしながら心配してくれている。
相変わらず、優しい人だ。

「そしたらさ、みんなで見舞いいこっか」

菅原先輩の提案は、すぐさま澤村先輩に却下される。

「具合悪いのに大勢で押しかけたら、治るもんも治らないだろ。
特に西谷とか連れて行ったら、騒いで余計熱が上がるぞ」
「えー…じゃあさ!」

そう言って菅原先輩はニッと笑った。

「お前が行ってやんなよ。バレー部を代表して、さ」



清水先輩と仁花ちゃんがいれば大丈夫だから、と言われ部活を途中で抜けてきた。
部内連絡網の名簿で確認した住所のメモを手に歩く。
”田中”の表札がある二階建ての家…ここか。
緊張気味にインターホンを鳴らすと、若い女の人の声。

『ハーイ、どちら様?』
「あの、わたし、烏野高校」
『おー!ちょっと待っててね!』

わたしの言葉を遮ったかと思ったら目の前のドアがすぐに開いた。
意思が強そうなネコのような瞳にちょっと派手目のメイク。
でも服装はかっこいい感じ。アネゴ、と呼びたくなるような雰囲気のこの人は…

「ドーモ☆姉の冴子です」

お姉さん、いたのか。知らなかった…
わたしが面食らっているうちに、お姉さんは階段の上の部屋に向けて大声で叫ぶ。

「龍ーっ!彼女来てるよ!何で彼女いるって黙ってたの?」

ぎゃーーー!彼女だなんて、そんな。
慌ててお姉さんに説明しようとしたら先に上から声が。

「ちげーよ、うるせえな!」

龍だ。
ちょっと鼻声だけど、今くらいの大声出せる程度には元気みたい。
よかった…と思うのと同時に、違う、と否定された寂しさが胸をチクリ。
仕方ないよね、龍はわたしの気持ち、知らないんだし…

そんなわたしをよそに、お姉さんは
「バカは風邪ひかないっていうの、大間違いだよねホント!」と言いながら
家に上がるよう勧めてくれた。
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