twitterであげていたおはなし。2

□魔法にかけられて(Xmasのネズミの国デート)
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見たことないような満面の笑みが、ぬっと視界に入ってきた。
自分の席に座っているわたし。
床に膝立ちして机に伏せる形、その上に端正な顔を乗っけている彼。

「これ、なーんだ?」

12月の頭、昼休みの終わりに突然わたしの教室まで来たかと思うと、
上目遣いで得意げに薄い封筒をかざして振ってきた。
いつもは見下ろされてるから、なんだか新鮮。
それにしても、わたしにわざわざ見せに来るもの…なんだろう?

「なあに、それ?」
「へへへ…驚かないでくださいよ…?じゃん!」

封筒の中から取り出したのは2枚の小さい紙片。
顔を近づけて見ると…

「これ!1dayパスポートじゃん…しかも25日ってクリスマスの…」
「びっくりしました?デートのお誘いです」

それは某人気テーマパークのチケット。
大混雑は必死だけれども、恋人とクリスマスにここで過ごすというのは
誰しも一度は憧れるシチュエーションだろう。

「って、チケット2人分も一度に買ったの?1万円超えるじゃん…」
「先輩、忘れてませんか?俺、10月に誕生日でしたよね?」
「…親か親戚に頼んで買ってもらったの?」
「お小遣いたくさんもらったんスよ。
高校生の男の子は何あげたらいいかわからないから、
やっぱり現金かしらねって…親戚のおばちゃんとかがくれて。
それで、自分で買いました!」

ホクホク顔で語る彼がチケットの片割れを差し出す。
わたしは鞄から財布を取り出して中身を確認。
…足りない。払えない。

「ごめん、今手持ちがないや。当日までに必ず払うから」
「先輩に払わせるつもり、ないですよ?
だって俺が行きたくて勝手に買って誘ってるんですから」

あっけらかんとスマートなことを言うのは、ハーフの潜在気質…なのか?
いつも落ち着きがなくキャンキャンと子犬のような彼が
余裕の笑みを見せるから、ちょっとドキッとした。

「リエーフの大事なお小遣いだったんだから、おごりはダメ。
もしお金を受け取ってもらえないなら、一緒に行かないよ」
「それはダメです!絶対に。
うーん……じゃあ、園内の飲み物とか食べ物は先輩持ちってことでどう?」
「まあ…それならいいかな…」
「やったー!絶対に行きましょうね。
風邪ひかないように気をつけてください。じゃ!」

押し付けられたチケットは大切に財布にしまった。
なんだかんだ言いつつ、とてもうれしいのに変わりはなくて、
しばらく顔が緩みっぱなしだった。
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