twitterであげていたおはなし。2

□OGマネとのお話。
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乾燥した冷たい風に吹かれながらたどり着いた、
久しぶりの母校、懐かしい体育館。

某ドーナツ店の箱を片手に鉄の扉を開ける。
威勢のいい声が飛び交う、朝の一コマ。
以前わたしがいた定位置、監督の隣には利発そうな可愛い1年生の男の子が座っている。
前にも会った…確か、芝山くんと言ったかな。
マフラーを外し、コートを脱いで監督の元へ向かう。

「お久しぶりです、猫又先生」

監督はおお、とにっこり笑顔。
隣で記録をつけていた芝山くんも

「お久しぶりです、お元気でしたか?」

はつらつとした笑顔を見せてくれた。
ドーナツの箱を差し出し、後でみんなで食べて、と言うと
ありがとうございます!と元気に受け取る。

去年までわたしは、ここ、音駒高校男子バレー部で
ただ一人の女子マネージャーとして活動していた。


コートの中に目をやれば、

ニヤリとした表情でこちらに手を挙げる、黒尾。
微笑んで会釈する海は、本当に年下とは思えない落ち着きだ。
研磨は…こちらに気づいてないみたい。意外と必死に、やってるじゃん。
虎は相変わらず派手な頭だ。女の子とは話せるようになったんだろうか。
黒尾の横でぺこりと頭をさげた福永、なんか身長伸びた気がする。
マネさーん!と大声で呼んでぶんぶん手を振る1年生コンビの犬岡くんとリエーフ。

そして…

「おらっ、よそ見すんな。集中しろ集中!」

自分より何十センチも大きい後輩二人に檄を飛ばす夜久。
…実はこの男は、わたしの彼氏でもある。


夜久衛輔、165センチそこそこ。
ポジションはリベロ。
ちなみにわたしはというと172センチ。
1つ年下で自分よりも小さい彼氏ができるなんて、昔のわたしは考えもしてなかった。
つきあいだしたのはちょうど1年前くらい。
わたしが卒業したのを機に、彼はつきあいを部内に報告した。
3月の卒業式の後の部室、わたしの目の前で

マネさんとつきあってます。本気です。

そう言ってくれた彼は誰よりもかっこいいと思った。
当時1年生だった虎が、ぽかんとして見ていたのをよく覚えている。

OGであることと共に”現役生の彼女”という立場になり
夏休みに何回か練習に顔を出して、少しお手伝いをしたので
今の1年生とも面識がある。



午前中は監督と芝山くんからチームの近況を聞きながら
のんびりと練習を眺めていた。
3年生ががっつりと部活をやっているのは変な感じだけど、
黒尾は既にスポーツ推薦で大学に合格しており
海は成績優秀だから、指定校推薦をもらったと言う。
2人とも大学に行っても続けるから、とバレーに勤しんでいるのだ。


そして昼休憩になると、示し合わせたかのように黒尾がわざとらしい声をあげた。

「さぁーって、邪魔者はみんなで飯食おうぜ」

ぞろぞろと黒尾についていく集団に
彼が慌てて呼びかける。

「お前ら、そんな気遣わなくても…」
「会うの、久しぶりなんだろ。俺らとはいつだって飯は食える」

無言で頷いた彼がわたしの元に来る。
実は、彼と会うのは他の部員と同じく夏以来。
彼が春高の予選、わたしが大学の学祭の準備やレポートに追われているうちに
全然会えない日々が続いて、4ヶ月が経とうとしていた。
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