twitterであげていたおはなし。2

□嶋田さんに恋する烏野マネのXmasのお話。
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12月24日、午後8時15分。
今日はイブのご馳走を用意するからか客足が絶えなかった。
明日は特売日だし、2日間で売上はまあ好調だろうな、なんて安堵していたら
自動ドアの開く音と、それに伴って冷気が吹き込んできた。
仕入れの帳簿から顔を上げ、

「スミマセン、今日はもう閉…」

お決まりのセリフは最後まで口にすることはなかった。
視線の先には、紺色のダッフルコートの隙間から烏野の制服をのぞかせた女子高生。
確かこの子は……

「お仕事中、すみません」
「君…烏野バレー部のマネージャーさん、だよね」

忠が同じように訪ねてきた時は、バレー部だと言われてから「ああそう言えば…」となったのに
なぜこの子を俺は覚えているのか。
それは今日の午後、メガネの3年マネと一緒に買い出しにきていたからなのだ。
バレー部は今日、部活の後にクリスマスパーティーをやると言っていて
炭酸飲料やら袋菓子を大量に買っていった。
その彼女がなぜこんな時間に、ここにいるのか。

「パーティー、こんな遅くまでやってたんだ?」
「いえ、それは6時くらいでおひらきになりました」
「そう。じゃあ…どうしてここに?お釣り間違えたりしてたかな、俺」
「…違います」

消え入りそうな声だ。具合でも悪いのか。
8時ともなると外は真っ暗だし、とんでもなく冷え込んでいる。
風邪でも引いているなら、親に迎えを頼みここで待ってるのがいいのではないかと思った。
彼女の目の前に行き、顔色を確かめる。

「大丈夫?顔、赤いし熱があるのかな?だったら親御さんに連絡して…」

その言葉は彼女の右手に遮られた。
俺のエプロンをはしと掴んでいる。
そして、うつむいたまま、彼女は言った。

「嶋田さん………好き、です」



聞き間違いかと思ったけど、エプロンを掴む手は小刻みに震えている。
冗談だとしても、こんな風に言うはずはない。
女子高生からの思いがけない告白に、返す言葉がなかった。

「今日も明日も…お仕事、なんですよね」

ゆっくりと話し出す彼女の声に耳を傾ける。
振り絞ったと思われる声はそれでも小さいから、神経をとがらせた。
一言も、聞き漏らさないように。

「わたし、嶋田さんの彼女になりたいです。
もし万が一…いいよって言ってくれるなら、
明日のお仕事の後、少しだけでいいので一緒に過ごしてください…!」

気持ちはうれしい。
バレー部の練習を覗きに行った時の様子から
一生懸命でいい子という印象は持っていた。
これは俺の勘でしかないけれど、パーティーが終わった後、
うちが閉店になるまで…この子は待っていたんだろうな。
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