twitterであげていたおはなし。2

□にろくんと後輩マネ彼女、クリスマスのお話。
2ページ/4ページ

イブの昼下がり、駅の広場に着くとまだ彼の姿がない。
まあいいか、と悠長に構えていたけれど…
さすがに約束の時間を30分も過ぎると不安になる。
電話をかけても繋がらないし、LINEも既読がつかないまま。
電車が止まっている様子もない。
映画、確かあと30分くらいで上映開始じゃなかったっけ。
なすすべのないわたしが頼れる人と言えば…

『どうしたの、デート中じゃなくて?』
『あの、それが…来ないんです』
『えっ!?そんな……連絡取れないの?』
『電話もLINEも応答なしです。茂庭さん、わたしどうすれば…』

半泣きになりながら助けを求める。
茂庭さんは、うーんとしばらく考え込んだ後に

『じゃあさ、あいつの家行くしかないんじゃない?
住所教えてあげるから行ってみなよ』
『心の準備が…できてません、無理です』
『じゃあずっとそこで、待つの?外なんでしょ、風邪引くよ』
『……わかりました』

電話を切った後にLINEで送られてきた住所。
地図検索をして携帯片手に、ドキドキしながら歩く。
クリスマスに、思いがけなく自宅突撃。
ご家族と会うかもしれない…いや、確実に対面する。
そう思って駅のトイレで入念に身だしなみを整えて、笑顔の練習をした。



ここだ。
流れるような”Futakuchi”という英語表記の表札が目に留まる。
門のすぐ内側には花壇があって冬だというのに鮮やかな花が咲いていた。
玄関の扉の前、深呼吸をしてインターホンを押す。
父兄の方とはそんなに面識がないから、緊張するな…

『はーい』
『あの、わたし、伊達工業高校バレー部でマネージャーをしておりまして…』

一息に名乗ると、間もなくドアが開かれた。

「いつも堅治がお世話になってます」

にこやかでかなり若く見えるきれいなお母さんだった。
来たはいいけど、何て言えばいいんだろうか。
おつきあいをしているってこと、ご家族に話しているか確認したことはない。

「えーっと……」
「堅治に用があるんでしょう?どうぞ、上がっていって」

玄関に入ると差し出されたスリッパ。
そしてお母さんの後をついていくと、ひとつのドアの前に。

「堅治、マネージャーさん来たわよ」

ノックしながらお母さんが呼んでも反応はない。

「いけない。わたしコンロの火をつけっぱなしにしてたんだった。
勝手に入っていいから、寝てたら叩き起こしてもらえない?」

パタパタと去っていくお母さん。
寝てたら、ってことは…ずっと部屋にこもっているってことかな。
既にお昼どころかおやつの時間、なんだけど。
もう一度コンコンとノックして呼びかける。

「入りますよ…?」

返事がないので、意を決してドアを開ける。
カチャリ、という音を立てながら足を踏み入れる、初めての彼の部屋。
あまり物は置いてなくて、窓にはブルーグレーのカーテンがかかっているからか
ぐっと大人っぽい印象。
肝心の部屋の主はというと…
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ