twitterであげていたおはなし。2

□遠恋彼女とのXmas(大学生設定)
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あいたい、って言葉は電話でもメールでもすぐに届く。
でもやっぱり、顔を見て「あいたかった」と言いたいし言われたい。
何十倍もの威力を持ったその一言で、空白の時間は即座に埋まる。


「久しぶりだね」

東京駅に来るのは何度目だろうか。
それにしてもここは、来るたびに色々なものが増えている。
話題のスイーツのお店、きれいになった通路。
でもいつも変わらないのは、

「持つ」

新幹線の改札口で、わたしの手から
キャリーバッグをサッと奪い取る彼の姿。
2歳年下の彼は落ち着いているので、
特に自分が年上だから、と気を張らなくていいのがすごく楽だ。

数歩先を行く彼、その腕に思い切り絡みつく。

「まだ昼間なんだけど」
「いいでしょ、これくらいしたって。4ヶ月ぶり、なんだし」


高校時代の後輩・英とは、絶賛遠距離恋愛中。
彼が春に都内の大学に進学するまでは、
高校生と大学生とはいえ地元・仙台同士だったので、時間を作って会えていたけれど
お互い違う土地の大学ともなれば、会えるのは長期休暇の時だけ。
前に東京に来た時は暑い夏だった。
灰色のビル群の隙間を熱風が通っていく、大都会。
仙台の方が過ごしやすいな。
暑いのが苦手な彼は生きていけるんだろうか、と心配になった。


都会の荒波に揉まれて、少しだけまた、男っぽくなった横顔。
数日間だけだけど、じっくりと眺められるんだな、と思うと口元がほころぶ。
そんな彼の足が向いた先は、わたしが記憶する限り自宅への路線とは違うもの。
環状にぐるぐると走る、恐らく一番メジャーな部類に入る電車だった。

「あれ、家…引っ越したの?」
「ううん、見せたいものがあって。寄り道したい」

何かな、なんて胸を弾ませながら車両に乗り込む。
流れる景色に目を奪われるわたしと、そっと目を伏せてドアに寄りかかる彼。
行動は別々でも、一緒の時間が、今、流れてる。

ある駅で地下鉄に乗り換えたかと思ったら、
すぐ次の駅で、降りるよ、と腕を引かれた。
東京の一駅って、すごく短い。

「どこ行くの?……うっ、寒い…」

駅を出るとびゅうと吹きつける風。
手足の先まで一瞬で凍りそうなくらいだ。
彼はキャリーバッグを駅のロッカーに預け、わたしの手を引いてずんずんと歩いていく。
よく見たら、周りの人も同じ方向に向かっているような…
腕を組むカップル、わくわくしている表情の家族連れ。

川の上に何本も渡された石橋は、どこも人で溢れかえっていた。
それどころか、川沿いにも人の群れ。
警備員の制服を着たおじさんが何人も点在している。

「ねえ、何か始まるの?」
「…あと1分待って」
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