twitterであげていたおはなし。2

□Xmasに部活な後輩マネと黒尾のお話。
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がらんとした、人気のない校舎の間をひたひたと歩く。
そしてたどり着いたのは昨日も来たこの場所。
「バレー部(男)」とガムテープで貼って作られた文字が躍るドア。
今年のクリスマスイブはここから幕開けだ。

猫又監督は言っていた。

「24、25日は自主練にする。あと31・1日は完全休養日だな。
家族とゆっくりしなさい」

自主練となった時にやったーと手放しで喜んでた、みんな。
…でも結局は。

「ういっす」
「お疲れ」

部室のドアを開けると、いつもと変わらない面々。
誰一人欠けていない。
隅っこでゲームをしていた研磨さんがわたしにチラリと視線を送った。
でもそれはほんの一瞬だけで、すぐに液晶画面へと顔を戻す。
そして小さな声で、

「……自主練だし、マネ、休んでても…大丈夫なのに」

これは研磨さんなりの気遣いだ。
半年以上一緒の部活にいて、ようやくこの人見知りで寡黙な先輩にも慣れた。
こんな風に話しかけてくれるなんて、我ながら大進歩。

「みなさんが練習するなら、わたしも休んでられませんから!」

”マネも選手と同じ仲間で、一緒に戦ってる仲間だ”
そう言ってくれた人がいたから。
すると、

「マネが一番やる気、なんて言われないようにしないとな。行くぞ」

頭上にポンと置かれた手。
見上げるとニッと笑顔を見せる。
この人が、さっきの言葉をくれた人・黒尾さん。
主将であり、密かにわたしが想いを寄せている人。


みんなはコートの周りをぐるぐるウォーミングアップ、そして準備体操。
その間にわたしは倉庫にボールのカゴを取りに行ったのだけど…
倉庫に入ると、目の前に影が落ちてふっと暗くなる。
振り返ったら、黒尾さんがすぐ後ろに立っていた。
ドアは開いたままだけど、半密室にふたりきり、だ。
嫌でも意識して、言葉はぎこちなくなってしまう。

「あ…く、ろおさん…」
「ん?どうした?」

黒尾さんは至っていつも通り。
一人で動揺しているのがバカみたいだ。

「ああ、ネット取りに来たんだよ」

わたしの肩に手を置いて、目の前にあった棚からネットを掴む。
肩に置かれた手、すぐ後ろから伸びてきた腕…
意識しないでいられるわけがない。
ネットを抱えると、カゴ持ってこいよ〜と言いながら出て行った。
みんなは何十分もかけて体をあっためてるというのに
わたしったらたった数秒で、全身が燃えたぎるように熱くなってる。


監督がいないから、代わりに黒尾さんが色々と指示する。
スパイクやサーブの決定率を記録しているわたしのところに来ては

「あー、ちょっと見して」

なんて近づいて来る顔。
入部当時は身長の高さも相まって、この人にビクビクしていたけれど
ふとした時にみせるやわらかな表情に惹かれた。
試合中に得点を決めた時のしたり顔だって、研磨さんにそっけなくされてニヤニヤしてる顔だって、全部…好きだけど。
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