twitterであげていたおはなし。2

□Xmasに部活な後輩マネと黒尾のお話。
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練習をお昼すぎまで続けると、部員の大半は帰宅していった。
残ったのは黒尾さん、研磨さん、リエーフ。
とはいっても研磨さんは隅っこで部室にいる時みたいにゲームをしていたから
わたしがトス、黒尾さんがスパイク、リエーフはブロックやレシーブ、という
リエーフ特訓プログラムになっていた。

「もう、俺無理っす…」

床にへたれこむリエーフ。

「そんじゃ一旦休憩な」

タオルを手にとった黒尾さんが体育館の出口に向かう。
その時、振り向いて一言。

「お前、ちょっとこっち来い」

リエーフのそばにしゃがみこんでいたわたし。
”お前”ってどっちのことを言っているのかわからなくて
リエーフと顔を見合わせていたら。

「お前だよ」

指さされて、心臓がゴトリと動いた。
広い体育館の中に響いてしまいそうなくらい。
立ち上がったわたしは、顔が赤くなっていませんようにと祈りながら
出口に向かう黒尾さんの後を追った。


黒尾さんは体育館を離れ、渡り廊下を通って校舎に入っていく。
校舎の入口で体育館シューズを脱いで靴下のままついていくと
黒尾さんは自販機コーナーのところで立ち止まった。

「お前、シューズわざわざ脱いだのか?」
「え。だって、校舎は体育館履き禁止じゃ…」

自分の足元を指差して笑う。
シューズ、そのままで来てる。

「ダメじゃないですか」
「いいのいいの、ちょっとだけ、な。秘密にしといて」

人差し指を口に当て、ニッと笑った。
…この笑顔に、弱いんですけど。

「口止め料ってワケじゃねーけど、ほら、ジュースおごってやるよ。
好きなヤツ選べ」

早くしねえと休憩終わりにするぞーなんてけしかけられたから、
慌ててホットココアのボタンを押した。

「お前、部活中にホットココアって…暑くねえの?」
「みなさんよりは動いてませんから。体育館結構寒かったです」
「そっか、寒いならジャージ貸したのに。ほらよ」

出てきた缶を手渡される。
おごってもらっちゃった。
本当は、飲まずにずっととっておきたい…
でも、冷めないうちに飲めよなんて言われたから、
プルタブを開けて一口。
…いつも飲むのより、何倍もおいしい。

「黒尾さんは何飲むんですか?」
「あー…俺はいいの。体育館にスポドリ残ってっし」
「でも、何か買いに来るつもりだったんじゃないですか?」
「……実は、ポケットに入れてた小銭、ジュース一本分しかなくて」
「ぶっ…」

ココアを噴き出しそうになった。

「笑うなよ」
「ごめんなさ…ごほっ。そしたら、申し訳ないですよ」
「いいんだって。寒い中練習につきあってくれてんだし」
「でも…」

缶を握りしめたままおろおろしていると、
いいことを思いついた、って感じの顔でこちらを見てきた。

「じゃあ、半分こしよう。お前がそれ半分飲んだら、俺にちょーだい」
「は…はい、わかりました」

ゴクゴクと数口のどに流し込んで、黒尾さんに缶を手渡す。
……あ。これって、間接キス。
気づいた時にはもう黒尾さんはココアを飲み干していた。
そして、嫌な予感が当たった。

「これで、間接ちゅーだな」

ニヤニヤしている。
嫌なわけない、なんて言えるはずもなく。

「そんなこと言ってないで、ほら、戻りましょう。リエーフが待ってますから」
「はいはい」
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