twitterであげていたおはなし。2

□年上彼女とのXmasのお話。
2ページ/4ページ


イブ当日、部屋の片付けを終えて
さて、今夜は何を作ろうかな、なんて考えていたら携帯が鳴る。
バイト先のコンビニからだ。

『もしもし?』
『お休みのところ悪いね、今、電話平気かな』
『はい、大丈夫ですけど…』
『実はね…今日シフトで入ってた子がインフルエンザにかかっちゃったんだ』

もしや…嫌な予感が全身を駆け巡る。

『非常に申し訳ないんだけど…代わりに、出てもらえないかな?』

大学に入ってからずっと続けてるバイト。
店長には本当にお世話になっているし、仲間もみんないい人ばかりで大好きな場所だ。
今までクリスマス期間に休みをもらうことだって、誰一人文句を言わず、むしろ
「彼と過ごせるといいね」なんて応援してくれた。
すみません、と頭を下げる度にみんなは笑顔で
「主婦は数時間あればご飯の支度できるしいいのよ」
「せっかく彼氏いるんスから、楽しんでください」
そう言ってくれた。
休み明けに出勤して、彼と過ごせなかったんだよねと言うと優しく励ましてくれて。

「行きます!今からなんで…15分後には着きます」

即座に返事をしていた自分が憎い、けど、これでいいんだ。
明日も休みだし。
まあ、彼は明日空いてるかわからないから、今年も一緒に過ごせなくなるのかもしれないけど…
バタバタと支度を終え、彼に一通だけメールをしておいた。
『ごめんね、バイト行ってくる』
後で、ちゃんと謝ろう。



クリスマスということで、外食や中食で済ませる人も多いのだろう。
夕方のコンビニなのに、平日のお昼に負けないほど人が絶えない。
チキンは揚げた先から売れていくし、仲間とパーティーでもするような大学生が
お菓子やらジュースやらをどんどん手に取ってカゴに入れていく。
一旦落ち着いた時に、店長に声をかけられた。

「はい、これ、着替えてきて。外でケーキ売ってもらえるかな」

渡されたのは、赤と白の衣装。
去年までは一度も着たことがなかった。
しかも、この寒い中スカートだ。

「店長、さすがに寒いですって」
「もちろん、上にコート着ていいよ。
スカートの女の子サンタが立つ方が、売れ行きいいんだよね」
「まったく…来年はわたし着ないからいいですけど」
「そっか、君は就職だもんな。最後のクリスマスか…」

そんな会話で、ちょっと切なくもなったけど
急いで着替えて店頭に立つ。
ちょうど私服で黒いブーツを履いてきていたからそれと合わせると、一応様にはなった。

ケーキ、予約してる人ばかりだろうに。
しかもホールケーキなんだから、買ってくれるとしても家族連れだろう。
そう思いながらも白い息と一緒に声を出す。

「クリスマスケーキはいかがですか〜?」

振り向いてくれる人はなかなかいないし、
小さい子供と目が合っても「ケーキはもうあるでしょ」と母親が引っ張っていく。
店頭でレジに立っているより遥かに孤独だ。
これなら、お昼時にできる長い行列、イライラしてるサラリーマンを相手に
淡々とレジ打ちして片付けていく方がいい。

なんて思っていたら横から声が聞こえた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ