twitterであげていたおはなし。2

□縁下誕生日の社会人カップルのお話。
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思い切り伸びをする、夜のオフィス。
周りには誰もいない、ひとりきりの夜。
今日は特別な日のはずなのに。
何やってんだろ、わたし。


一昨日はクリスマスイブ、昨日はクリスマス。
世間の社会人カップルは仕事を早々に切り上げ、どっかで美味しいものを食べたり
寒い中身を寄せ合ってイルミネーションを見ていただろう。

かくいうわたしは、というと。
二日間とも仕事に拘束され、終電のお世話に。
イルミネーションが消灯された街をふらふらになりながら帰った。
家に帰ったらメイクも落とさずにばったりとベッドに倒れ込んでいた。
もちろん、チキンやらケーキなんぞ口にすることもなく。

でも、こんなわたしにも一応いる。
恋人ってやつが。
そして何を隠そうその彼の誕生日が、クリスマスの翌日。
まさに、本日なのだ。

繁忙期だからクリスマスを一緒に過ごすのは無理かもねって言って
それなら誕生日に纏めてお祝いしようかって二人で決めたのに。

プレゼントは買ってある。
でも、どこかお店を予約することもなく、サプライズも考えていなかった。
彼女失格、だよなぁ……


勤めているオフィスは駅からすぐの高層ビル。
わたしの席からはレインボーブリッジが見えたりして、夜はかなりいい景色。
でも、そんな場所にいても…今やるのは仕事だから嫌になる。
一秒でも早く帰って、彼に直接おめでとうを言いたいという気持ちはあるのに
体がぐったりしていて、さくさくと動いてくれない憎い手。

その時。

デスクにある電話が鳴った。
内線のランプが光っている。
社員同士の内線とはちょっと呼出音が違うから、
これは多分、入口に設置してある来客用内線電話からだ。
もう10時近くだというのに…誰だろう?
受話器を取り、部署名と自分の名をいつも通りに名乗る。

『夜分遅くにすみません、お届け物がありまして』

電話の主はおそらく運送会社と思われる男の人の声。
荷物か…基本は、総務部宛のはずだけども。
きっと総務部はとっくに帰っていたから、明かりが漏れてるこの入口に来たんだろう。

『すぐ伺いますので、そのままお待ちいただけますか』
『はい、すみません』

入口に向かい、ドアを押し開けるとそこには。
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