twitterであげていたおはなし。2

□縁下誕生日の社会人カップルのお話。
2ページ/3ページ

「ち…からっ…!?」
「遅くなったけど、メリークリスマス」

濃紺のコートを片手に、スーツ姿の彼が立っていた。
予期せぬ訪問者に動揺が隠せない。

「どうして…ここに…」
「えっ、だってこのビル普通に誰でも入れるじゃん。
エレベーターホールでお前の会社のフロア確認できるし。
入口たくさんあるけど、部署のプレート貼ってあるから…
来客として内線にかければ、社員が中から開けてくれるってことだろ?」
「いや……まあ、そうだけど…」
「何?来たら、都合悪かった?」

首を傾げる彼の表情には、怒りや呆れ等はない。
何が、メリークリスマス、なの。
今日はもっと大切な日でしょ。

「仕事、一段落ついたの?」
「んー、あと少し、かな」
「じゃあ、中で待たせてもらっていい?
セキュリティ上無理なら、廊下で待つし」

本当は、来客は一部を除いてオフィススペースには入れてはいけないルールだ。
けども、応接室で待たせるのも、廊下で待たせるのも嫌だし…
彼はわたしに会いに来ただけで、ライバル会社の人間でも何でもない。
ええい、後でバレたらバレたで、怒られても構わないや。

「いいよ、入って」

彼を招き入れ、ドアを閉める。
席に戻ると、隣の席に彼が座った。

「へえ、こんな感じのところで働いてるんだな」

キョロキョロ見渡してる姿を尻目に、仕事の続きに取り掛かる。
早く終わらせて早く帰りたい理由が、すぐ隣に。
書類やパソコンのディスプレイとにらめっこ。
さっきまでよりも手がするすると動くのは、彼が隣にいるパワーからなのかな。
わたしが黙々と作業を続けている間、彼は一言も発さなかった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ