twitterであげていたおはなし。2

□大地さんと過ごす年末年始のお話。
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普段は、平日休みが割と気に入っている。
役所とかに時間を気にせず行けるし、人気スポットも空いてる。
でも、彼と過ごす時間のことを考えると
カレンダー通りに休めない、自分の変則的なシフト勤務が恨めしい。

世間のOLさん達が羨ましい。
中堅メーカーに勤める友達も、30日から4日まで休暇だと言っていた。
そんなわたしは今年、31日が仕事納めで1日が仕事始め、という
まったくもって年末年始らしくない予定になっている。


一年の最後の日。
仕事で疲れきって鉛のように重い体のはずなのに、
一秒でも、早く。
その思いが自然と足取りを軽くする。
アパートに着くと、玄関の横の小窓から漏れる光にホッとした。

ドアを開け、廊下を小走り。
キッチンと居室とを隔てている扉を開けると、部屋着姿でくつろいでいる彼。

「大地!遅くなって…ごめんね」
「いいや、平気。お前こそお疲れさま」

表情は明るく、傍らにはたくさんの紙袋があった。

「どうだった、菅原達は」
「ああ、相変わらず元気だったよ」
「後輩も、来てた?」
「それがさ、影山と西谷は来れなくって。でもそれ以外は全員揃ったんだ」
「そっか。二人共代表選手だし、年末も忙しいんだね」

彼は数日前から休暇に入っている。
今日は高校時代の部活仲間に呼び出されての、誕生日パーティー。
わたしが仕事で一緒に過ごせなかったのは残念だけど、
彼が大事な人たちからお祝いしてもらえて嬉しそうなのを見ると一安心だ。

「よーし、じゃあ、夕飯食うか」
「あれ、食べてなかったの?」
「年越しラーメン、お前と一緒に食うって決めてたからさ」

そう言うと立ち上がってキッチンへ。
コンロにかけてあった鍋の蓋を取って、得意げな笑顔。

「時間あったしスープ作っといたんだ。
いいにおいするだろ?結構自信作。
今から麺茹でるから、着替えてろよ」

わたしはそばアレルギーがあるから、年越しそばが食べられない。
つきあった時にそれを伝えてから、年越しを一緒に迎える度に
ラーメンをすする習慣ができていた。
「俺、醤油ラーメン大好物だから、願ったり叶ったりだよ」
なんて言ってくれるから、面倒だと思ってたアレルギーのこともさほど気にならなくなった。
ぐつぐつという湯の沸く音とスープの煮える音を聞きながら、部屋着に着替える。


湯気の立つどんぶりがふたつ。
小気味いい音を立てながら二人で食べるラーメン。
今年もあと数時間で終わりだ。
一足先に食べ終わった彼は、紙袋を開け始める。

「あ、旭からのプレゼント、ワインだ」
「せっかくだし今から冷やして、年越し頃に飲めば?」
「あー…とりあえず冷蔵庫に入れるだけ入れておいていいか?」

ようやく完食した後は、のんびりとTVを眺めながら年明けを待つ。
小さな部屋で過ごすひととき。
派手なことは何もないけれど、彼の誕生日であり一年の最後である今日を
こうやってそばにいられるというのはとても贅沢だなと思った。

隣の肩に寄りかかってみる。
一日の、一年の疲れがスッとなくなるような安心感に包まれた。
左肩に大きな手が添えられる。

「…大地」
「ん、何?」
「誕生日、おめでとう」
「今更、なんだよ」
「日付が変わる前にちゃんと言わなくちゃな、って」
「ありがとな」
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