twitterであげていたおはなし。2

□受験勉強の気晴らしに、バッティングセンターに行くお話。
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暖房をかけると頭がぽーっとなってしまいそうだったから、あえて寒い部屋でひとり、背中を丸めて机に向かう。
夕方だけど既に外は暗く、カーテン越しに感じる外気温の低さに震えた。

ここで負けちゃ、ダメだ。

来月にはセンター試験がある。でも、そこがゴールではない。気を抜いたら一気にダメ人間になるような気がしてた。だから、部活を引退した初夏から今まであらゆるものを我慢してきたような。

友達と放課後に寄り道して食べる、二段重ねのアイス。
扇風機に当たりながらのごろ寝。
家族と笑ってみるテレビ番組。
そして……

学校の違う友達と連絡を取ったり遊ぶこともなくなった。わたしは、その中にもれなく含まれているひとりをふと思い出す。

幼なじみの茂庭要。


伊達工業に行ってバレーをやってた彼とは、通学電車で会えばわたしの学校の最寄駅に着くまでおしゃべりを楽しむ仲だった。
中学校までずっと一緒で気心も知れていて楽だし、違う学校の話を聞くのは面白くて、いつも十数分があっというまに感じられた。

「今年の1年に大分賑やかな奴が入ったんだよ」
「楽しくなりそうなんだね」
「まあね。相変わらず男ばっかだけど。お前うちの学校来たら一気にモテるかもな」
「またまた〜」
「オススメはしないけど。休み時間はプロレス始まるし、エロ本回ってくるし…
本に関しては鎌ちが没収されてたしね。ひっどい環境だよホント」
「あはは!鎌先は相変わらずかぁ。そう言いながら、要も楽しんでるでしょ?」
「…バレた?うん、楽しいよ、すごく」

彼は夏で部活を引退し、進学はせず就職に向けて動くと言っていた。
何ヶ月か前、内定をもらっている…というのを彼の母親から聞いたきり。

朝、学校の図書室に一番乗りし、帰りもギリギリまで学校で勉強する習慣がついたから夏以降電車が一緒になることはなかった。ああ、なんで今、要のことを思い出したんだろうな、わたし。
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