twitterであげていたおはなし。2

□幼なじみの彼女とのお話(国見ちゃん視点)
2ページ/4ページ

本能のままに動いたその代償は余りにも大きかった。

彼女は翌日から教室内で俺を徹底的に無視し始め、しかも数日後、隣のクラスのサッカー部の奴と付き合いだしたのだ。それはクラスメイトの雑談から知ったこと。

本人に確認したくても無視されているから、しようがない。
金田一に代わりに探らせようと思ったけど「なんでそんなことするんだ?自分で聞けばいいのに」と言われた。
鈍感はこれだから困る。

廊下で、男と二人で話している彼女を見かけた。あの二人つきあってたんだね、と話していた女子を本人にバレないようにそっと、ジロリと睨みつけることしかできない俺。むしゃくしゃした気持ちがおさまらず部活にも身が入らない。ロードワークもビリだったし、レシーブも全然上手く拾えなかった。

「国見、お前…調子悪いなら無理すんな?」

先輩の岩泉さんにこんなことを言わせてしまうなんて、と申し訳ない気持ちでいっぱいだった。心配をかけてはいけないから、と次のスパイク練では逆に、悔しい気持ちを思い切り込めて打ち抜いた。

「こんだけの威力出せるんじゃないか。いつもこれぐらいやれよ」

溝口コーチの言葉には、適当にはーいと返事をしておく。
誰も俺が、失恋の痛みをボールに込めているだなんて思っていないだろうな。


そして今日は月曜で部活が休養日。まっすぐ帰ろうとしたら昇降口に既にローファーを履いてコートを着た彼女が立っていた。聞かなくても”誰か待ってます”スタイルだ。

「よう」
「…何」
「彼氏とこの後デート?」
「関係ないでしょ」

教室よりも人が多いせいか、無視はされなかった。久しぶりの会話だけどチクチクとトゲのある口調。ここで彼氏とやらが来たら、もろにダメージを受けてしまいそうだ。

「関係ある」

そう言って無理矢理彼女の手を引いた。

「えっ、ちょっ…」

教室で突き飛ばされはしたけど、俺の方が断然パワーあるし。衆人環視の中、女の子を引いていくなんてたやすいものだった。駐輪場に着いて手を離し、自転車を出そうとする。でも、彼女は逃げずに待っていた。そのまま自転車を押していくと、後ろからついてくる。校門を出て少しすると周りに人がいなくなったから、言ってみた。

「後ろに乗れ」
「ダメだよ、おまわりさんに見つかったら怒られるし」
「いいんだよ、見つかったら…ごめんなさいって言ってやめればいい」
「そういう問題?」
「いいから、乗れって」

鞄をひょいと奪って、自分のと一緒に前カゴに入れた。後ろがずん、と重くなる感覚。でも、漕ぎ出しても俺の体は身軽なままだった。荷台の部分を掴んでいるのだろう。

二人乗り、最後にしたのは多分中1の時かな。あの頃はまだ俺も部活がそんなに忙しくなくて、よくこいつと一緒に帰ってた。流行ってた歌を口ずさみながら、英も一緒に歌って、なんて無邪気に言ってたな。

そんなことを思い出しながら、ひたすら家の方向に車輪を運ぶ。
冷たい空気が頬を掠めてビリビリと痺れが走った。
そのうち、感覚がなくなりそうだ。

「スピードあげるから、ちゃんとつかまってろよ」

そう言うと、こてんと預けられた体、腹のあたりに回された腕。
お互いコートを着てるけど、それとなく背中に感じるやわらかさ。

思った以上に女だ。
教室で抱きしめたときはほんの一瞬だったから気づかなかった。

自転車を全速力でこぎながらそっとつぶやく。きっと風がかき消してくれるだろうから。

「やっぱ、好きだな」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ