twitterであげていたおはなし。2

□西谷先輩と後輩ちゃん
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偶然、ロードワーク中に通った第二体育館。開いた扉からは見えたのは、男子バレー部。

「来いやぁーーー!」

一際威勢のいい掛け声に足が自然に止まった。
声のする方を見ると、前傾姿勢で両手を広げ、目を輝かせた人。
次の瞬間、ボールに飛びついた。
無駄のない素早い動き、静かなレシーブ。
気づいたら心の中で拍手していた。
練習が中断され、コーチを囲んで指示を聞いている選手たち。
周りよりもずっとずっと小さい、『猪突猛進』の荒々しい文字が躍る背中が一瞬で目に焼きついた。

向こうで先輩の呼ぶ声がしたから、再び走り出す。
休憩時間にそれとなく、さっきの人のことを聞いてみた。

「あの、男バレでレシーブすごい人、いますよね」
「ああ、ノヤのことかな?」
「ノヤ、さん…先輩なんですね」
「2年3組の、西谷夕。リベロだよ」



数日後、雨でグラウンドが使えない野球部とサッカー部が体育館になだれ込んできた。
仕方なしに第一体育館を彼らに譲り、バレー部が男女合同で第二体育館を使うことに。
千載一遇のチャンスだ、と思ったから勇気を出して声をかけてみることにした。
坊主の先輩らしき人と二人で柔軟体操をしている先輩。

「あの…西谷先輩ですよね?」

わたしが呼びかけると、先輩はパッと顔を赤らめた。

「そう、だけど?」

あの時目にした活気あふれる姿とは裏腹に
すぐ顔をそらし目も合わせずに柔軟を続けながら、ボソッと返事をする先輩。
横の坊主の先輩がニカッと笑う。

「…ノヤっさん、もしや照れてるな?」
「ちげーよ!そんなんじゃねえ」
「せっかく女バレの子が話しかけてくれてんのになー」
「…」
「しかも先輩、だってよ!いいなー、俺もそんな風に女の子から呼ばれてみてえ。
『田中先輩、カッコイイ〜』なんてな」

裏声を使ったその言葉に吹き出してしまったら、
西谷先輩はゆっくりとわたしの方を向いてくれた。

「…で、俺がどうかしたか?」

胸に秘めていた気持ちを伝える時が来た。
深呼吸して、その大きな瞳をまっすぐに見て。

「西谷先輩、わたしを弟子にしてください!!!」

身長が低めのわたしがコートで生き残るとしたら、レシーブ力を上げるしかない。
そんな思いからした弟子入り発言。

「お前…一年か。それ、本気か?」
「ハイ!レシーブ、上手くなりたいんです!
先輩のレシーブ見ました。かっこよかったです!」
「か、かっこいい…?」

動揺した先輩に、坊主の先輩がトドメを刺してくれた。

「いいじゃねえかノヤっさん。教えてあげれば」
「ん…まあ、そうだな、教えてやれないことはねえ」
「本当ですか!?うれしい…」
「おい一年、その代わり…アイス、オゴれよ!」
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