twitterであげていたおはなし。2

□直射と乱反射
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「ねえねえ、マッキー」

話しかけたはいいが、さて、何を話そうか。
彼を目の前にした時のわたしは常にこんな感じ。
とりあえずの一言で彼を自分に繋ぎとめようと必死だ。
残り少ない休み時間、ちょうど腰を上げて席を離れようとしていた彼は、

「ん、何?」

そう言って再び席に座る。
ここ最近何回か繰り返されるやりとり。
その裏側にある気持ちに、君は気づいているのだろうか。

「この前友達が、バレー部のあの人やっぱりかっこいいよね〜って話してて」
「へえ」
「きっと及川くんのことだろうなって思って、競争率高いよって釘刺したらさ」
「うん」
「そうなの!?って異様に驚いてるから、今更驚くこと?って言ったら…」
「うん」
「あの人、ってコーチのことだったんだ」
「ほー」

相槌を打ちながらも目はほとんど合わせてくれない。
窓の外を見たかと思ったら、廊下へと目を向けたり。
きっとわたしの話がつまらないんだろう。
いつか話そう、ってあっためてきた話は全然役に立たなかった。
折れた心を必死で立て直していると、いよいよ席を立つ彼。
おとなしく席に戻るか、と思ったその時。

「溝口くんに言っとく。どんな反応だったか、今度教えるから」

ニッと笑ってから教室を出ていった。
たった一言と一瞬の笑顔なのに、効果は絶大だ。
そっけない相槌で水をかけられたも同然、
もう火はつかないかもって思ってた心の導火線に、ぼうっと再び火が灯る。
くやしいけど、やっぱりまだこの恋を諦めたくない。



同じ委員会になったマッキー。
あだ名で呼んではいるのは、周りにつられたからであって特段親しいわけじゃない。
強豪部活のレギュラーと聞いてたから、どうせサボるだろうなと思っていたら
彼はなんだかんだ部活を調整して、ちゃんと仕事をしに来てくれた。

「大会前なんでしょ?無理しなくていいよ」
「大丈夫。悪いけどあと5分したら体育館戻るから、それまでにやれるだけやるわ」

派手めな外見、日頃の軽いノリからは想像もしなかった真面目さ。
しかも作業も早くて、わたしよりもずっと働きがいい。
いわゆる、ギャップ萌えと言っていいのだろうか。
あっけなく好きになってしまった。
開きかけてる花の蕾、その淵に足をかけて中を覗き込んだ途端
一気に落ちて、蜜に溺れた蝶の気分だ。

自分の気持ちに気づいてから、どうにか彼の視界に入ろうと
彼が一人になった時を見計らって話しかけるようになった。
委員会に出席したり作業したりと一緒にいても、彼は終わり次第部活にすぐ向かってしまう。
だから、そんなに話せない。
同じ委員というメリットが活かせないもどかしさ。
そして、話しかけてもノリノリっていうわけじゃないし
こっちは目を見て話そうとしているのに、視線はほとんど合わないときた。

わたしなりの必死のアプローチも虚しく、彼は他の女の子とは楽しそうにしている。
その様子はとても伸び伸びしていて朗らかだ。
何の話をしているかは聞こえなくても、
「やだー!マッキー最悪〜」なんていう高い声と共に
彼の肩にやすやすと触れて笑っている女子を見ると、胸がしめつけられた。
あの位置に自分がいられたらいいのにな、って何度思ったことだろう。

難攻不落の城に想いを馳せるのは、なかなかしんどいものがある。
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