小説

□■明日も明後日も
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二人で休みを合わせて、一日中出掛けた日。
さんざん遊んで、食べて、飲んで、騒いで、くたくたになった体で人気のない野原に腰を下ろした。
少し休もうと、草の上に寝そべって、顔を合わせてはまた笑った。
暫く心地いい沈黙が続いて、ジュビアがふと口を開いて言った。

「明日なんて来なければいいのに」

突然の寂しげな声に驚いて、俺は「なんで」と、顔だけジュビアの方に向けた。
夕焼けの空を見ていたジュビアは起き上がって「いいえ。なんでもないです」と笑って見せた。
そのままジュビアは立ち上がってどこかへ行く素振りを見せけれど、俺は腕を掴んでもう一度訊ねた。
泣いているのか、笑っているのか複雑な表情で、少し考えた後ジュビアは答えた。

「今日がとても楽しくて幸せだったから…」

明日も幸せかは分からない。
でも今日は幸せだった。
明日が来なければ、この幸せのまま終われるから。

俺を見下ろしながら、そう言った。
なんでそんな事思うんだよ、とかじゃなく、ただただ胸が締め付けられた。

「じゃあ明日も、お前が楽しいと思える一日にしてやるよ。今日が終わるまで今日は幸せのまま。また明日が始まったら、その時また明日の幸せが、明日が終わるまで続くんだよ」

どうしてそんな事言ったのか自分でも分からない位、唐突だったけれど、自然と口から出た。

不確かで、決まっているわけでもないのに、俺は明日も今日みたいに楽しいと思ってた。
だって明日もジュビアは隣に居るはずだから。

〜終〜

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