君のことが
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〜幸村side〜
「これで練習終了!各自、コート整備をしてから帰ること!」
「「「「「イエッサー!」」」」
俺は幸村精市。立海大付属高校男子テニス部の部長を務めている。そして、中学校ではできなかった全国三連覇を成し遂げた。もちろんあの時と同じメンバーで。俺達3年はもう引退の時期が迫ってきたのだが、できるだけ多く練習に参加し、後輩達にできるだけ多くのことを教えるつもりだ。受験勉強も、本格的に始めなくてはならないな。レギュラーであった俺、真田、柳、柳生、仁王、丸井、ジャッカルは既に推薦を貰っている。仁王と丸井に関しては何故推薦がもらえたのか不思議だけど、仁王と丸井も中学生の時と比べて大人になった。真面目に勉強しなくてはいけないことを、分かってきたらしい。柳のデータによると、このまま真面目に勉強すれば合格できるらしい。特に丸井は、気合が入っていた。
「幸村」
「・・・ん?」
「この後の勉強会は、どこにも寄らずに俺の家でいいか?」
「うん、そのつもりだよ。今日はあの空き教室使われているみたいだからね。」
「そうか、では他のメンバーにも伝えておく。」
「了解、苦労をかける。」
今日はどこかの委員会で空き教室が使われているみたいだから、真田の家で勉強会をすることになった。
いつもは空き教室で赤也も交えて勉強会をしている。赤也は定期テストが近いからね。仁王、丸井、ジャッカルはギリギリで推薦を貰えたから赤也に勉強を教える暇はないのだけれど、それ以外はよっぽどのことがない限り絶対に合格するだろう、と先生にも言われているくらいだから赤也に勉強を教えている。特に柳がね。
「幸村、準備が整った。行くか?」
「あ、ああ。そうだね。赤也も来るんだよね?」
「ああ。蓮二と一緒に校門前で待っている、と言っていた。」
「フフ、それじゃあ早く行かなくちゃね。」
「ああ。」
赤也、ソワソワして待っているんだろうな。いつも会っているのに、俺達のことを見るたびに嬉しそうに笑うんだよな。赤也曰く、大学に入ったら今以上に会えなくなってしまうからなるべく会うようにしているらしい。
その言葉を聞いたとき、真田は凄く嬉しそうだった。なんだかんだで可愛い後輩なんだろう。
「俺達さ、よく推薦貰えたよな!」
「本当じゃ、特にブンちゃんが推薦貰えるとは驚いたぜよ。」
「なんだとー!?お前だっていつもサボってただろぃ!」
「プリッ」
「おい、ブン太落ち着け。」
「そうですよ。仁王君も挑発しないでください。」
「皆まだまだ元気だね、明日の練習メニュー増やそうかな。」
「うええ!?」
「フフ、冗談だよ。」
「ぇええええ!なんだよぃ・・・、びっくりした・・・!」
「(本当、昔から変わらないな。)」
ずっと、このメンバーで一緒にいたいな。なんて、そんなことを考えることが最近多くなった気がする。
大学生になったら学部も変わるし、今みたいな日常は送ることができなくなるのかな、
「幸村、」
「・・・ん?どうしたの、真田。」
「そんな、寂しそうな顔をするな。」
「・・・え?もしかして、顔に出てた?」
「ああ。」
「そっか。
・・・真田はさ、このメンバーとずっと一緒にいたいって思ったり、する?俺は、皆と離れたくない。」
真田はなんて答えるのだろう。
「無論だ、六年間も一緒に過ごしたメンバーだ。完全に別れるわけではないが、会える回数が減るのは、寂しく感じるな。」
「そっか、そうだよね。ありがとう。」
『寂しく感じる』、この言葉に、救われたような気がした。
他の皆も、俺と同じことを考えてくれているのかな、
また不安になってきたのだけれど、校門前で嬉しそうに手を振っている赤也を見て考えるのはまた後にしようと思った。