黄金魂

□もう一度
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「今日もまずまずのお天気だね。…ほら、あんたたち、早く顔洗ってきなさい!」

ヘレナの声で子供たちは、はぁーいと返事をして出ていく。

ーあれからもう、半年。

半年前のあの日、私は病院のベッドで目覚めた。病院といっても、そこは簡易的な救護施設のようなところだった。数日の間、眠っていたらしいけれど、なんとか命はとりとめたらしい。

長い長い、夢を見ていた。真っ暗な世界。沢山の人たちと一緒に、私は坂道を登っていた。歩いても歩いても道が続いている。けれど人々はひたすら列をなして歩いていた。道は、ひどくでこぼこで、私は思わず転びそうになった。その時、誰かの手が私に伸びてーその力強い腕は、黄金色に輝いていたーその誰かの腕は、私を引っ張り起こしただけでなく、そのままずんずんと私を引っぱっていき、気が付くと私は病院で目覚めたのだった。


ユグドラシルがなくなって、大規模な爆発が起きたらしく、私の住んでいた町も少なからず被害を受けていた。幸い、妹弟たちは無事だった。

それから、私はまたこの町で暮らし始めている。かつてのようなユグドラシルの恵みはなくなったけれど、また町を元通りにしようと、町の皆は一生懸命働いている。
私は、町の復興の為に働く男たちが利用できる食堂を、近所の奥さんたちと一緒に始めた。店は繁盛していて、当面の間、生活に困ることはなさそうだった。

前にあの人にもらったお金は、持病の治療費にあてさせてもらっていた。あれから一度も姿を見せないけれど、あの人はどうしているんだろう。生きているのか、あるいは、もう…?

(…そんなこと、ないよね、きっと…)

ヘレナは、あわてて顔をふると、空を見上げて、息をついた。
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