dream(連載)@
□Amazing kissB
1ページ/6ページ
サガ、と名乗った目の前の男を、名無しさんは不思議な気持ちで見つめた。見た目や声はそっくりだけれど、物腰や醸し出す雰囲気はカノンとは別のものだった。
「貴女は…我が弟カノンを知っているのか?」
「はい…」
名無しさんが頷くと、サガがフッと笑みをこぼす。
「カノンが貴女に何か迷惑をかけてはいないか?」
「そんな…とんでもないです、カノンは、私の命の恩人です…」
「カノンが?」
名無しさんはサガに、カノンとの経緯を話した。
(珍しいこともあるものだ…あのカノンがそこまで他人に関わるとは…)
サガは名無しさんをじっと見た。
「もしや…貴女はカノンの…恋人か?」
「!?…いえ、私は…」
名無しさんは咄嗟に否定し、赤くなって下を向いた。
「それならば…これ以上は立ち入らぬほうが貴女の為だ。」
サガの言葉に、思わず聞き返す。
「何故です?」
「我々には何を置いても優先すべき使命がある。それに…」
サガは目を閉じて続けた。
「カノンは…いや我々は罪深く業の深い人間…普通の幸せは望めないのだ。」
「…え?」
それだけ告げるとサガは踵を返す。
「あのっ…」
名無しさんは声をかけるが、サガは振り返らず去っていった。