黄金魂
□アスガルドの夜
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アスガルド、ユグドラシル近くの町。アイオリアは、ここで再会したデスマスクと、酒場で一触即発の雰囲気になるが、アイオリアは黙って席を立った。
「待って、アイオリア!」
慌てて追いかけたリフィアはアイオリアに尋ねる。
「びっくりした、ふたりとも、ここで戦うのかと…でも、どうして…?」
リフィアの問いに、アイオリアは振り返ってフッと微笑む。
「自分の信じる道を進むだけ…だろ?」
「…アイオリア…!」
先程の自身の言葉を引用したアイオリアの返事が嬉しくて、リフィアの顔に花のような笑みが広がった。
「さ、今晩の宿を探すぞ。」
「はい!」
アイオリアは、お尋ね者のリフィアをアスガルドの兵士から常に庇いながら歩いてくれた。
わかってる、アイオリアは私を彼らの目から隠そうとしてくれているだけ…でも…
『…っ!距離が近い…!』
不意に引き寄せてくれる大きな手や、鍛えられた腕に、思わず心臓が高鳴ってしまう。
夕方、二人はこの町で唯一の宿にたどり着いた。店の主人に尋ねる。
「今晩の宿を頼みたい。」
「いらっしゃい。…お兄さんたちは、同じ部屋でいいのかな?」
「あ、いえ、あの…」
戸惑うリフィアの声にアイオリアの声が、重なる。
「…ああ、構わない。」
『えっっ!?』
「(アイオリアったら何を言い出すの!?)
あのっ、ちょっと待って、お金ならありますからっ…もうひと部屋…」
「部屋、ひとつしか空いてなくてね。悪いねぇ。」
「…そうですか…。…じゃお願いします…」
2階の部屋へ上がる間、リフィアは考え続けていた。
『…もしも、もしものことがあったら…困るわ、その時ははっきり断らなくちゃ…だって知り合ったばかりだし…。何よりこんな大変な時だし…やだ、私ったら何を考えてるの、アイオリアはそんな人じゃないわよ…!』
ひとりで顔を横にブンブン振るリフィア。
「リフィア。」
突然名を呼ばれて心臓が止まりそうになった。
「は、はい!?」
「どうかしたのか?」
「な、何でもない!…です…」
「…そうか?」