黄金魂
□Christmas story
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「夫は妻へのクリスマスプレゼントを買う為に、大切な金時計を売り、そのお金で美しい櫛を買いました。妻は夫へのクリスマスプレゼントを買う為に、長く美しい髪を売り、夫の金時計に似合う鎖を買いました。一番大切な宝物を手放して、お互いに贈ったプレゼントは、無駄なものとなってしまったけれど、お互いを思いやる美しい心、それは何よりも素晴らしい贈り物になったのです…」
クリスマス・イブ。リフィアは、教会で子どもたちに絵本の読み聞かせをしていた。すると、教会の扉がギィと音をたてて開いた。振り返ったリフィアは、目を見張った。
「…アイオリア!?」
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「アイオリア、いろいろ付き合わせてしまってごめんなさいね。」
あれから、アイオリアとリフィアは、子どもたちと一緒に雪で遊んだり、鬼ごっこをしたりして過ごした。
「いや…俺も楽しかった。」
アイオリアは柔らかい笑みを浮かべた。
「聖域では、雪など滅多に降ることがないからな。…雪合戦があんなに楽しいとは知らなかった。」
アイオリアは、側の木に積もった雪を手に取った。
「アイオリアったら、本当に楽しそうだったものね。」
リフィアはにっこり笑って、アイオリアの背中を見つめた。
『でも…アイオリアは、どうして突然来てくれたのかしら…』
こんな風に、約束もなしに、彼が突然来るのは珍しい。聖域とアスガルドに住むふたりは、普段からそう頻繁に会えるわけではなかった。リフィアが最後にアイオリアに会ったのは、彼女が聖域を訪れた2週間ほど前のことで、その日、アイオリアとリフィアは、クリスマス前で賑わうアテネの街に出掛けたのだった。
「すごい…」
街はきらびやかに飾られ、美しいクリスマスイルミネーションに彩られていた。行き交う人々は、大人も子供も若い男女も、皆楽しそうで、皆同様に浮き足立って見えた。
「同じクリスマスといっても、アスガルドとはこんなに違うのね…!」
リフィアは心底驚いて言った。
「アスガルドでは、クリスマスをどう過ごしているんだ?」
「そうね、最近では大きな街だと、クリスマスを華やかにお祝いするところも、増えてはいるみたい…。でも、私が知ってるクリスマスは…皆、家族と家でゆっくり過ごしていて…。」
「…そうか。」
「…私も小さい頃は、そんなクリスマスに憧れていたの。」