企画

□宣言します
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私はゆるキャラが好きだ。
同じクラスで仲の良い男の子にそれを話したら、知り合いにもそういう人がいると聞かされた。
同じ趣味の人ととことんコアな話をしたい。
そんな軽い気持ちだったの。
いざ目の前にするまでは。


「あの、なまえと言います」

「…知ってる」

「え?」

「集会で見たことある。生徒会長だよな」

「あ、はい…」


無口で無愛想でちょっと怖い。
だけど、瞳は澄んでいて綺麗だと思った。
紹介された彼、七瀬遙さんはひとつ歳上の3年生だった。
名前を聞いて水泳部のすごい人だなんてぼんやりと考えた。
そんな学校のスターがゆるキャラ好きだというのが信じられなかったけど、試しに話を振ってみたら目を輝かせて 熱がこもった声で語り出した。
そこからはもう、ノンストップで。
気がついた時にはお互いを名前で呼び合うフランクな仲になっていた。
と同時に、私は彼のことを好きになっていたんだ…と思う。





「遙先輩、これ知ってる??」

「それは…!期間限定発売の…!!」

「セレクトショップにわざわざ足を運んだ甲斐があったよ!!かわいいでしょう!!!」

「フォルムがいいな…」


とあるゆるキャラのストラップを見て目を輝かせる遙先輩。
接点がこのくらいしかないので、このチャンスを活かしてアピールする必死な私。


「このキャラはいつ見てもかわいい…」


なんて微笑んでストラップをつつく遙先輩の方が…かわいい、なんて言えないけど。
きゅんと胸が締め付けられる。


「渚には感謝しないとな」

「え?」

「お前に会えた」

「っ!!」


ボンっと音をたてて頭が爆発したかのような衝撃。
次いで熱が顔に集中しだした。
わかってるよ。
遙先輩にはそんなつもりさらさらなくて、なんの下心もなく放った言葉だって。
裏付けるように続けて、あいつらにはこの良さがわかってないからなと拗ねたように言ったから。

でも、それでもさ…


「遙先輩、好きです」


そんな嬉しいこと言われたら、想いが溢れていっぱいいっぱいになる。
苦しいくらいに。

咄嗟に出てきた言葉に驚いたのは、何よりも自分自身。
熱を持った顔がさらに熱くなって全身に広がった。
緊張のせいなのか身体が震えている。
黙ったままの遙先輩をそっと見上げた。
キョトンとした顔をしている。


「俺も、」

「えっ」

「俺も好きだぞ」


続いた言葉は、私の名前でなくて、揺れるストラップのキャラの名前。
私の一瞬の緊張とトキメキを返して!と言いたい。
天然で心を引っ掻き回す遙先輩の様子に泣きそうだった。
なんとか落ち着こうとひとつ呼吸を置いて、ちらりと見上げる。


「いいですもん…今は」

「?」


いつか絶対に私のことを好きだと言わせます。
だから覚悟しててください、遙先輩。
私はしぶといんですよ。

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