進撃の変人(番外編含む)

□親戚のリヴァイさん。
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彼は静かな辺りを感じ、座る。
大自然に生き物達と、人間はゆったり暮らしている。過ごしてきた東京とは勝手が違うようで、リヴァイは空気を吸う。


(……澄んでやがる。……今までの空気とちげぇ。……地下街のクソの掃き溜めとは違う。…だが、人間の目は同じらしい。うるせぇな…。)


リヴァイはステラとペトラの頭を静かに撫でた。二人は顔を上げて「にやぁー。」と、屈託なく笑う。
母親と父の方は、愛想笑いと毒舌全開で乗り切っている。

両親は日本語が堪能だ、親戚の皮肉もドイツジョークで応戦するし、更に祖父母も味方だ。


父方の親戚の頭が堅く、四男である朔太郎さんはのんびりした過ぎている。朔太郎さんの一番上の兄夫婦が煩いのだ。次男や三男はラル家には友好的。

長男のハゲがしゃしゃり出て来てきた。母を見るなり怒鳴る。


「どの面下げてきたべや!!!……朔太郎?!……おめーが呼んだべか?!……外国人連れでぎで。じがも、子供さこさえて恥を知れ!山田の恥さらしだ!!!」


朔太郎さんは、耳に手を覆い被せのんびり抵抗する。さらに、祖母まで皮肉る。強い。


「…今年の蝉はうるせぇなぁー母さん。」

「ホントねー。お父さん。蝉に悪いわよ。」


こそっと、明美さんが隣の母に耳打ちした。流石の山田夫妻。伊達に荒波を乗り切っていない。


「…おじさん達。流石ね。ローラちゃんも涼しい顔してる。」


更に、ドイツ人の父は笑顔で長男夫婦にカタコト日本語でにっこり話す。


「ワタシ、ニホンゴペラペラデス。ワタシノワルグチダイジョーブデス。ツマノワルグチシャラップデース。コドモタチコウナルカラ、ツレテキテナイデース。」


ざわ…ざわ…ざわざわ…。


お坊さんが来た後の山田一族はざわざわしている。
総勢20名前後の親戚が、ドイツ人に圧倒されていた。更に父は言う。わざとカタコトにしている。


「…アナタタチ。ソトニイッタラガイコクジン。ナニガチガイマスカ?ボクノオクサンモオナジデス。ニホンジンオカシーデス。」


父は大学時代は、日本語を専攻していた理系男子だった。母は父を見てドイツ語で愛をささやいたが、日本人には分からない。両親だけ吹いた。

正論を言ったから、長男夫婦は何も言えないが、しゃしゃり出たのはその息子だった。
やはり、髪が薄く人間も薄いのか母を見て嫌みを言う。


「法事に子供を出さないなんて、非常識じゃないのか。」

「……家の子供達昨日挨拶しましたよ。この狭さですからね。…人酔いするから裏にはいますよ。」

「っ!」


「…頭下げてたよ。礼儀正しくね。見てないのは、おじさん達じゃないですか。散々酔っぱらってさ。いい加減にしなよ。彼女が駆け落ちするのも分かるわよ。…おじさんが、変な会社の御曹司だかなんだか、連れてきたんでしょ?…好きでもない男と結婚だなんて。」


明美さん。気が強いのか、母の制止を振り切って立ち上がる。頭に血が上ったのか、長男の眼鏡の息子もむかつく話し方をした。

彼はリヴァイを見て気味が悪いと思ったからだ。母はおもわず目付きを変える。


「養子だか知らないけど、気味の悪いガキも連れてきて。泣かされてたろ!!……何処の生まれかも分からないのに、よく連れて来れるな!!!」

「ふざけるなぁ!!!……お前は黙ってなさい!!!」


ついに、朔太郎さんが立ち上がり怒鳴った。それには母も祖母まで驚いた。

「…父さん。」


朔太郎さんは、優しいタレ目をしている。ステラに似たのんびりしているが、芯が強い所はここにある。
彼は一同を見て、言った。


「大陸が違うだけで、こうなるのか。お前達だって、アメリカにいきゃあ外国人だべが。……どこの生まれかわからん人間の辛さがお前達にはわからんのか!!!……この馬鹿野郎ども!!…兄貴、アンタは親父の林檎に見向きもしなかったろ。今は充兄の倅が後継いでくれる言うとる。……娘はもう、大人だ。どうするか二人の問題だ。リヴァイ君は二人の家族で私ら夫婦には、孫だわ……アンタ達は黙っててくれ。」



それを、リヴァイは廊下で聞いてしまう。お手洗いがそこしかなかった。除菌シートで手を拭きながら、俯いた。
ありがたいと思った。
理解がある人間は、結構いる。


(……悪くねぇな………この国の奴等は。)



アメリカだって、日本人のジョン万次郎を遭難から助け出している。
人間は捨てたものではない。
リヴァイは、生まれは覚えていない。ただ、覚えているのは母は前の世界と同じ名前で、同じような貧しい暮らしで、自分を愛情一杯に接してくれた。

だが、病で亡くなった。
リヴァイはまだ5才。一人で生きていくしかなかった。ドイツの郊外にストリートチルドレンをする中に、日本人の養母の財布をスッたら怒られたが、初めて名前を聞かれる。


『アンタ。名前は?』

『リヴァイ…ただの、リヴァイ。』

そして、女性はぽっちゃりした体型で、彼を抱き締めた。聞き慣れない言葉で泣いていた。ケニーとは違った。
ケニーはいまだに現れていない。


『…よー頑張ったなぁ。おばちゃんが味方や。』

『……』

記憶は戻ってないが、その時。
何故か誰かに優しく抱き締められた言葉を思い出す。


『……ゴロツキさんは、泣きたいのに泣かないんだ。だからわたしが泣く。』

誰だろう。女の子だった。
リヴァイはその時、初めて泣いた。
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