VOICE
□今の生活
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何か固い物が落ちる音がして名取久由香は目が覚めた。
「………?」
いつもと何かが違う。天井がピンクのハート柄の壁紙で埋め尽くされていた。
(あ、そうだ。美佳の家に泊まったんだ)
ぼーっとする頭で久由香は思い出す。
えっとウチん家の家族誰もいなかったから泊まる話になったんだっけ?夜は確かずっとゲームしていたような気が…。
そんなことを考えていると、いきなり目の前が真っ暗になり顔に何か軟らかい物で殴られた。
「だっ!」
「やーいやーい久由香のお寝坊さーん!」
部屋にいた友人の美佳にクッションを当てられたのだ。いかにも子供の様な笑顔でクッションで殴ってきている。
「痛ッ!痛いから止めてって!」
久由香は別のクッションを盾にしていたが、ふと何かに気づく。
「お寝坊さんって……ウソ!!寝過ごした!?」
慌てて布団から起き上がり、枕元の形態で時間を調べる。
五時零分。
「…………」
どうやら美佳の基準としてはとっくに起きている時間帯らしい。
「起きるの遅いんだから〜ってわぁ!いきなり何で涙目でクッション投げてくんのー!」
「あんた早起きしすぎ!!何でそんな早いの寝たの今日の二時じゃん三時間しか寝てないじゃんっていうかさっき時計見たら一瞬四時五九分だったし!」
はぁはぁ肩を上下に揺らしながら、久由香は叫ぶ。もっとも美佳の家の人たちに迷惑がかからないよう音量は小さいが、美佳に言いたいことは伝わったらしく。
「や、ごめん。私が起きたとき久由香が布団かぶって寝ていたから起こすのは悪いかなーって思ったんだけど、流石に三十分経つと我慢できなくなって…アハハハハ」
四時半に起きたんかいというツッコミはしないで久由香は美佳に問いかける。
「布団めくった?」
「……はい?」
「私が寝ているときに布団めくって顔を見た?」私がゆっくりと聞くと、美佳は大げさに首を横に振り。
「そんなことないよ!決してどんな寝顔かなーって興味本位で確かめたら汗流して苦しそうな顔して寝ていたからそっとしておこうとってわけで別に見ていたわけじゃ……いたぁー!」
美佳の顔面に枕が当たる。
「詳しい説明とあなたの本音をどうもありがとう」私が微笑みながら言うと美佳は涙目で。
「うう…はめられた」
「いや、はめてないし」
美佳はその後、立ち上がってクッションを元の場所に戻しながら言った。
「じゃあ朝ごはん食べる?」
「えっ!もう!?」
「準備手伝ってねー」
「着替えるからちょっとまって!」
「先行っているねー」と美佳は部屋から出て行った。久由香は布団をたたみ、美佳の部屋の隅に置いた。
しかしものすごい部屋だな。と久由香は美佳の部屋を見渡す。
壁も天井もピンクのハート柄の壁紙であり、床もまたピンク色でチェック柄のカーペットだ。
クッションは流石にピンクだけって訳ではないが、やっぱりファンシーな物ばっかりだった。
もちろん美佳の寝るベットはピンクのハート柄だ。
久由香が寝た布団は美佳の親が私に渡してくれたものなので、普通の白い布団だ。
改めてものすごいなーと考えた後、無言で着替え、無言で部屋を出て行こうとしてドアノブに手をかけた。
そこで彼女は何か思い出し、彼女は口を開いた。
「そういえばさっき、物音しなかったっけ?」
そんなこと部屋に問いかけたって返事は来ない。
久由香はまあいっかと頭を掻きながら部屋を出て行った。