VOICE
□歴史書(プロローグ)
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「そうそう、これ」
中学卒業と同時に乳児の頃から世話になった養護施設を出て、入学する河瀬高校の近くのアパートへ引っ越す準備をしているときだった。
部屋のドアに寄りかかっていた亜紀さんは、井ノ河 理琴に一冊の本を渡した。
「なんですか、これ?」
理琴が聞き、亜紀さんは首をかしげて答えた。
「よくはわからないんだけど、あなたが預けられた時に一緒に送られてきた物なの。渡そうと思ってたんだけど、忘れてて…」
そうなんですか。
そう適当に答えながら手元の本を観察していた。
茶色い表紙の薄い本には題名は無く、薄汚れていた。
ページを一枚めくる。
白い無地に、印刷された文字で【過去の歴史書】とあった。