VOICE

□記憶の一ページ
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「何読んでるんですか?」

 昼休みの時間、図書館でじんに聞かれた。
私が通う学校、河瀬高校は何百年もの歴史をもつ学校で、偏差値も高いので有名だ。
【生物災害(バイオファザード)】事件で校舎が崩れ、新しい校舎を高い丘に建ててから、50年経っている。
 そう。あの事件から50年経った。


「<未来の歴史書>を読んでた」私は答えた。

「あぁ〜。それって途中、ページが切れてるんですよね」少しタレ目の神が笑った。

「用はそれだけ?わざわざ長い渡り廊下歩いて来たわけじゃないでしょ」

「アハハッ。そうですね」また笑った。

笑ってから、言った「校長先生が呼んでましたよ」

「分かった」


 そう言ってから、古いボロボロの本を閉じて約30メートル歩き、本を戻した。
振り向くと図書館には誰もいない。神は渡り廊下に行ったそうだ。
図書館の出口を見た。

ため息をついた。

図書館から出て、校舎まで続いてる長い渡り廊下を歩いた。
窓から外を見、町を見下ろすと、町中の建物に明かりがついてる。
時間は13時09分。もちろん昼だ。
私は町から目を放し上を見た。


真っ暗だ。


何もない。黒い暗闇しか見えなかった。
渡り廊下を過ぎ校舎に入った。そのまま校長室に向かおうとしたが、
図書館にふでばこを忘れたのを思いだし、私は小走りで戻った。

「あった」

見つけてそれを手に持ち、教室に戻った。
 教室から三人の声が聞こえた。

「あのさぁー井ノ河さんてウザくない?」

「そうそう、いつも自分ひとり何でもできると思ってるんだよね」

「他人を見下してるって感じ〜。っあ!」

私が教室に入ったらその三人は黙り込んだ。
そう、私が井ノ河だ。
私は自分の机にふでばこを置いて、三人がいる机に向かった。


「陰口なら誰にも見つからない所でやった方がいいよ」

三人に向かって私はこう言い放った。
その後、後ろ向いて教室を出た。


「なんだあいつ・・・」そう聞こえた。



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 校長室の前に来たとき2−D組の、加島 美由紀 も居た。


「あ!井ノ河さんだぁ〜」


美由紀は私に手を振った。
もちろん私は無視した。
―――したが、少し気になって


「加島さんもここに?」

「うん。藤花さんに教えてもらったの。」藤花は、さっきの三人の一人だ。

「何なんだろうね?」今度は美由紀が聞いてきた。

「さぁ」


そのまま壁に寄りかかりながら私と美由紀は少しの間、黙り込んだ。
河瀬高校の校長先生は男の人で、若い。
若い。が、少し変で何故か校内放送を嫌う。人を呼ぶのも人づてだ。
緊急のときはさすがに放送するが、めったにない。
そんな事を思っていると気がついたことが一つ・・・


「何で部屋に入らないの?」


と、美由紀に聞こうとしたが
(向こうから来るのがいつもどうりだな)と思い、言いかけた言葉を飲み込んだ。


そのまま何分か過ぎた。
私は腕時計を見た。

ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ 

秒を表す音が聞こえる。
時間は一時十七分だ。



一時四十分で授業が始まる。
そう思うと、私はいらいらしてきた。



ガチャ



「お、来ていましたか!入って下さい。」



校長先生がドアを開けた。



『はい』



私と美由紀はそう返事をして校長室に入った。
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