めいこい 続き物

□やっぱりもう一度【1】
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友人に誘われてマジックバーに来た。
せっかくお酒を飲めるようになったし、面白いお店を開拓したいって事で探してたら見つけたらしい。

間近で手品を見るのは1年ぶりかな?
突然チャーリーさんが姿を消してしまって以来。
思い出すのが辛くて、テレビなどでも極力観ないようにしてきた。

今日はバーだし、クロースアップマジックがメインという事で、チャーリーさんがやってた様な物とは違いそうだから着いてきた。
ホールの前方には小さいステージがあって、時間になるとその日のメインのマジシャンがショーを披露する様だ。
食事をしながら待つ間、ホールを回る店員さんもマジシャンらしくて、人が少なければ少しならやって見せてくれたりもするみたい。
店内を見回すと、ちょうどチャーリーさん位の背格好をした後ろ姿が目に入り、ドキリとする。
流石に1年も経つともう逢えないと諦めた方が良いとは思いつつ、それでも街中で似たような人を見かけると、まだ目で追ってしまう。
…夜だし、ここはマジックバーだし、などとつい考え込んでしまった。

「…芽衣!どーしたの?食事来たよ?」

「……あ、ゴメン」

いけない。こんなトコに居るわけないのに。
食事は普通に美味しくて、お酒も進んだ。

「ーラストオーダーのお時間ですがご注文は如何ですか?」

ショーの間は注文が出来ないから、始まる少し前でラストになる様だ。
せっかくだからカクテルをもう一杯と、軽いおつまみを頼んだ。

「お待たせしました」

「はい、………………ぇ」

注文の品を持ってきた店員さんを見て驚いた。
さっき見かけた人は本当にチャーリーさんとよく似ていた。

「芽衣、どうしたの?」

『あ…、いや…』

……瓜二つではあるけど、驚いて固まる私に対して何の反応も無い。
どういう事だろう?
まさか本当によく似た人に会ってしまうとは思わなかった。
だって人間だし。
………いや、もしかして、明治でショーをしていたみたいに姿を見せているなら、ありえなくもない。というか、それだと物の怪のまま??

「ねえ、今の人のコトずっと見てたけど、あーゆータイプが芽衣の好みなの?」

『あ、いや、そういう訳じゃ…』

「せっかくだし、もう1度来てもらおうよ。
すいませーん♪」

止める間もなく呼ばれてしまってこちらに気付いた。

『はい。如何なさいましたか?』

「あの、この子が、あなたがタイプみたいです♪彼女とか居るんですか?」

『ちょ、ちょっと!!良いから…!』

『あはは。ありがとうございます』

友人は酔っているせいか、やたら積極的だ。
私の方はすっかり酔いも覚めてしまった。
対してそのよく似た店員さんは、必死に止める私と友人のやり取りを面白そうに見ている。ますます恥ずかしい。
チラリと見ると目が合ってニッコリと笑顔を返される。
笑い方もよく似ているけど、動揺しているのは私だけの様だ。

「それで、彼女はいるんですか?」

もう良いから、本当に。
さっき質問を流されたのが気になる。
別人でも、これだけ似ていて彼女がいたらショックで立ち直れないかもしれない。

『残念ながらいないんですよ〜』

「そうなんですか?!じゃあ…!
…芽衣?どうしたの?」

『あ、いや、そうなんですか…』


……あれ?いないって聞いてもショックを受けてる。
そうか、この人がチャーリーさん本人だったらと思っていたから、何か言ってくれないかと、どこかで期待していたんだ。
そう都合の良い話なんか無い、か。
落ち込む私をよそに、このよく似た店員さんは、こういう話題には慣れている様で普通に営業トークを返されてその場は終わった。

「せっかく来てもらったのに〜。
話してみたらイマイチだった?」

『あの…好みとかじゃなくて…前に話した彼にすごく似てるの…。話し方や笑い方も』

「え?!もしかして本人?!
でも、向こうは全然そんな素振りなかったね?」

『…うん』

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