めいこい 中編

□君に逢いに/補完妄想
2ページ/7ページ


あれから1ヶ月が経つが、根付をどうすれば良いか未だに分からない。
芸妓の間で流行ってるとは聞いたが、川上に相談してもなぁ…。




「鏡花ちゃん♪
な〜にもの想いに耽ってんのさぁ?」

「うわぁっ!!なな、なんで川上が此処にいるんだよ!勝手に書斎に入るな!」

「お宅の先生にご用があったからね、真っ当な訪問だよ。
それで大親友の鏡花ちゃんにも挨拶しなきゃと思ったのさ♪」

「親友じゃない!ばい菌が付くだろ!近寄るな!!」

「お〜や〜?
鏡花ちゃんがウサギ以外のお守りを持ってるなんて珍しいじゃあないか?
しかも流行り物に手を出すとは、
余程…



…芽衣の事が恋しいんだねぇ?」

「うぅ、うるさい!そんなんじゃ無い!」

「無理すんなって。
突然いなくなったって聞いて俺だって寂しいんだぜ?
あいつの事だからきっと元気でやってるさ。
だから、鏡花ちゃんもそんなに落ち込むなって。な?」

「…………。

…違うんだ。
これは、あの子の物なんだ」

「なに?
じゃ何か、鏡花ちゃんはあいつを見送ったってのか?」

「そんな訳無いだろ。
たまたま会った時に落として行ったんだよ。
次に会った時に渡そうと思っていたら、いなくなってたって知ったんだ」

…本当の事なんか言える訳が無い。

「そうか…。
ならこれは鴎外さんがあいつに贈った物に違いないな。」

「鴎外さんが?」

「あぁ、贈った日に消えちまったらしいぜ。
だから強力な御守りなんだな、なんて話してたんだけどよ」

「…じゃあこれさ、鴎外さんに返してくれよ」

「ん、鏡花ちゃんは良いのか?忘れ形見なんだろ?」

「…良いんだ」

「そっ…か、分かった。
よし、任せとけ。
貸しにしといてやるからさ」

「はぁ?!むしろ今迄の貸しを返してもらう番だろ!」

「へいへい」

………………

なにはともあれ、これで大丈夫だろう。
鴎外さんならきっと大事にしてくれる。
それにあれだけ立派な方だから歴史に残る人物になるのは間違いない。
鴎外さんが大事にした所有物なら僕たちが死んだ後でもきっと後世まで残るはずだ。
そうして、あの二人がいた時代まで残れば…きっと…。

もし違っていたとしても…この可能性に掛けるしかないんだ。







……この僕にこんな事までさせるなんて、
本っ当に図々しいグズだよ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ