めいこい 中編

□ヤキモチ/甘
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「あの根付は元々縁結びのお守りだからね。
そういう願いごとはよくされてたよ。
あと縁切りとか」

「ふーん…」

縁結び…がなにかひっかかる。
チャーリーさんは私よりずっと長く生きて?きてるから、主も含めて沢山の出会いがあったんだろうな。
私と出会うまでにも魂依の、……女性の主がいたりはしなかったのかな?
チャーリーさんは優しいから、やっぱり大事にしてくれる主の事は守ってきたのだろうし、その主が女性の魂依なら、私みたいに彼を好きになっちゃうんじゃないのかな…。

そんな人いて欲しくない。
そんな人、他にいなかったよね……?




「そんなにじっと見つめられると照れちゃうな♪」

「えっ?」


いつの間にか、答えを探す様に彼から目が離せないでいた。
………というか、今のって、まるで元カノにヤキモチでも妬いてるみたい!
生きる時間が違うんだから、そんな事でヤキモチ妬いても仕方無いのに!
などと考えていたら急に恥ずかしくなってきた。


「どうしたの?顔が真っ赤だよ。
ゆでダコ、いや、君の場合は和牛の赤身に例えた方が…
……グッ…ゲフッ!
ちょ、ちょっと、芽衣ちゃん、ウグッ…枕は、く、苦しい…」

「…………」

チャーリーさんの事を考えて心配しているのに、人を牛肉に例えるなんて、色々と台無しだ。
気が済むまで枕を振り回したら少しスッキリした。

「………ふーっ。
な、なんか荒れてる様だけど、どうしたんだい?」

ボロボロになったチャーリーさんが復活してきた。

「なんでもない!」

「さっきの話を気にしてるの?」

「違うもん」

「じゃあ、その可愛い顔をこっちに向けて欲しいんだけどなぁ」

「……」

敢えて膨れっ面のままで彼の方を向く。

「ふふっ、もう、どうしたのさ?
ほら、おいで」

我慢出来ない、といった様に吹き出したチャーリーさんの腕の中に収まる。
これ以上意地を張るのも難しくなってきたから、素直に聞いてみることにした。

「……チャーリーさんは、これまでにも好きになった人はいるの?」

「好きになった人?」

「だって、あの根付が私の物になるまでには色んな持ち主がいたんでしょ?
だから、その中には、私みたいな魂依とか…」

「そんなの芽衣ちゃんだけに決まってるじゃないか」

「でもチャーリーさんは優しいから、女の人の魂依とかいたら、きっと……
そのチャーリーさんの事を…」

「…好きになるだろうって?」

「うん」

「はぁ、やっぱり分かってないなぁ」

「え?」

「良いかい?
僕は、芽衣ちゃんが僕の事を好きになってくれるよりずーっと前から君の事が大事で、大好きで仕方なかったんだよ?
そんなのは芽衣ちゃんだけだ…」

「う、うん」

耳元で改めて力説されるとくすぐったい気がする。

「でも、チャーリーさんの事を好きになった人はいなかったの?」

「うーん。どうだろう?」

「主の為ならなんでもしたいものなんでしょ?」

「そうだよ」

「チャーリーさんを好きになった人がそれを望んだら、恋人みたいな関係にもなってあげたのかなって………」

自分で言ってて悲しくなってきた。
私は何でこんな事言い出しちゃったんだろう。

「もしも望んだ主がいたら、そうだったかもしれない。
でもそういう人はいなかったし、そもそも、そうならない様にするよ」

「……私はチャーリーさんの事好きになってるけど」

「はは、……そうだった」

一見いつもと変わらない笑顔だけど、困った様な、悲しい様な顔。

違うよ、傷付けたい訳じゃ無いのに…。
一度出てきてしまったヤキモチが抑えられなくなってしまってる。

「君は、僕から好きになってしまった唯一の主だからね。
だから、こうして抱きしめたり、
キスをしたり…」

彼の唇が耳朶に触れて、小さく身を捩る。
顎を軽く上げられて、金色の瞳に見据えられる。

「見つめ合ったりしたい、と、思ったのは芽衣ちゃんだけなんだけどな?」

「うん…」

「だから、そんな泣きそうな顔しないで?」


チャーリーさんを疑う訳じゃ無い。
彼の事が大好きだから、彼にとっても自分が一番だって思いたい気持ちが膨らんでしまって、でも私には想像する事も知る事も出来ない時間や出会いと別れがあったはずで。
彼の事をもっともっと知りたくて、でもそれで勝手に落ち込んで、チャーリーさんが傷付くと分かってる事を言ってしまって
…なんだかすごく自己嫌悪になってきた。

こうして目の前で笑顔を絶やさないでいてくれるだけで十分幸せなのに…。
これ以上何を求める必要があるんだろう?
こんなに大好きなのに。

いつの間にか流れていた涙をそっと親指で拭われる。

「こんなに大好きだって言ってるのにまだ足りない?」

そんなこと無い―
声にならなくて顔を横に振ると、
おでこをつけて、覗き込まれる。

「僕は芽衣ちゃんしか見えてないんだけどな?
芽衣ちゃんは違うの?」

「違わない」

「なら、それで良いじゃないか。
何か問題ある?」

「…………」

ない。
それで良い。

いつもの笑顔で明るくそう言ってくれるから、不安が段々消えて行くのが分かる。

「チャーリーさん、ありがとう」

「いえいえ。
元気は出ましたか、お嬢さん?」

おどけた様にウインクなんかするから笑ってしまった。

「どんな顔をしてても可愛いけど、君はやっぱり笑顔が1番だよ」


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