めいこい 中編

□20年目
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「いやぁ、芽衣ももう成人式かぁ。生まれたのがついこの間の様だよ」

「お父さんたら大げさだよ〜」

「この間二十歳になったからって、ハメを外したりしちゃダメよ。
今日は同窓会があるんでしょ?」

「大丈夫だって!ちゃんと早く帰ってくるから」

だって、チャーリーさんにこの晴れ姿を見せたいから。
まだ朝なのに夜が待ち遠しいな。

「20年かぁ。
お前が生まれて初めて家に帰って来た時は、
それまで愚図ってたのにピタッと泣き止んだんだよなぁ」

「そうだったわねぇ。どれだけ泣いててもお店に行けば泣き止むから、助かったわ。
まさに看板娘だったわね」

そういえば、子供の頃からお店が遊び場だった。
物心つく前からどころか、生まれてすぐからだったんだ…。
…………あれ?

「ねぇ、私が家に初めて帰って来たのはいつ?
生まれてから何日くらい?」

「一週間位かしら…どうかした?」

あぁ、そういう事かぁ……
胸元のネックレスにそっと触れる。




…………………………………………




成人式には地元を離れた友達も大勢帰って来ていて、懐かしかった。
中にはもう結婚している子もいて、朝の会話じゃないけど時間が経つのは早いなぁと思わされる。
同窓会も盛り上がってたけど、私は一次会で切り上げる事にした。

「あんた、もしかしてまだあの彼氏と続いてるの?」

「うん」

前は恥ずかしくてごまかしてたけど、今はもう認める事にしている。

「じゃあ今日もこれから待ち合わせ?」

「そんなとこ」

「いいなぁ〜!愛されてるぅ♪」

「ちょっと〜」

「早く晴れ姿見せてあげな!」

「「また今度ね〜!」」



…………………………………………



急いで帰宅して部屋に戻ってくると、チャーリーさんはまだいないようだった。
晴れ姿みてもらいたいんだけどな。
しっかりと着付けた振り袖はちょっと苦しいけど、
着崩れないようにがんばらないと!



「ふふ、芽衣ちゃんおかえり」

ふらりとチャーリーさんが現れた。

「なんでそんなに笑ってるの?」

「だって、力一杯背筋を伸ばしていて可愛いなぁと思ってさ」

「もう!着崩れないようにがんばってたの!」

「うん。
本当に綺麗だよ。すっごく似合ってる」

おでこに軽くキスをされる。

「あ、ネックレスしてくれたんだね」

「うん。可愛いねってみんなに褒められちゃったよ」

「そりゃ良かった」

「チャーリーさん」

「なに?」

「これ、ありがとう」

「改めてどうしたの?」

「本当に20年間ずっと見守っていてくれてたんだね」

「……。
うん。初めて芽衣ちゃんに会ったのが昨日の事みたいだよ」

「お父さんみたいな事言う…」

「はは。お父さんだと君にキスできないけど良いの?」

「…そんなの気にしないくせに」

「そうだね」

あっさりと認めて顔が近づく。
唇が柔らかく重なる。

「これからもずっと一緒にいてくれる?」

「もちろん、君が望んでくれる限り、ずっと一緒だよ」







※後日談※

「あれってドラマの真似だったの?」

「ちゃんとその前から準備していたよ。
 でも、まさか同じ様なシーンがあるとはね」

ドラマの中では、二人が出会って丁度20年目の日にプロポーズをしていたのだ。
だから主人公の彼はその日にこだわっていた。
チャーリーさんがネックレスをくれたのも、
私が生まれて初めて家に帰って来た日、つまり私たちが出会ってから丁度20年目の日だった。


「同じ様なって、プロポーズ?」

きっと否定するけど敢えて聞いてみる。

「どんなに好きでも僕はプロポーズは出来ないよ。人間じゃないからね」
すこし寂しそうに笑う…。
予想通りだ。

「だからネックレスだったの?」

「というより、芽衣ちゃんが欲しがっている物をプレゼントしたかったんだよ」
ちょっと食い下がってみようかとも思ったけど、やっぱりはぐらかされてしまう。

でもこれだけロマンチックな事しといて、なんでそんな所は引いてしまうのかな。
人間じゃなくても私は彼が大好きだし、きっと一生ずっと彼の事だけを愛していくのに。
といってもそれがチャーリーさんだから、これからの時間で私から沢山の愛情を注いであげよう。
もうそんな寂しい事言わせないから。




※終わり※
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