めいこい 中編

□これからもずっと/甘
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う、わー。
やられたなー。
 
ドラマの中で同じ様な事されるとは。
しかもプロポーズ。

芽衣ちゃんが欲しがってたネックレスを明日渡そうと思ってたのに。
指輪でも無いし下手に意識させてしまう事も無くて良いかと思ったんだけどなぁ。
まぁこの日じゃ無いと意味無いし、仕方ないか…。

………………………………………………


「どんなに好きでも僕はプロポーズは出来ないよ。人間じゃないからね」

……プロポーズは出来ないけど、願わくばずっとずっと側にいたい。
芽依ちゃんもずっと同じ気持ちでいてくれたら…
…なんて都合の良い夢。



声に出して伝える事は出来ないけど、ネックレスを着けてあげた時に密かに願っていた事位は、せめて許してほしい。
空いている薬指は、君にふさわしい人間の相手の為に残しておくから。



………………………………………………………………


「チャーリーさんの手ってきれいだなー

指も長くてスラっとして白くて…」

お揃いの指輪、したいなぁ…。
まじまじと眺めてると、ついっと指が揺れて唇に当てられる。

「どうしたの?」
少し困った様に笑ってる。

…お見通しって顔だ。
チャーリーさんは察しが良いからな…。

でも、ペアリングがしたい!
別にエンゲージリングでなくて良い。
私はずっと、一生チャーリーさんと生きていくつもりだって事を、
チャーリーさんに分かって欲しい。
その証って事で一緒に着けてもらって、あの寂しそうな顔をする事が減れば良い。
提案したって首を縦に振らないのは分かってるから、こっそり用意しちゃおう。



………………………………………………………………



私たちはいつもの様に一階のアンティークのソファで他愛もなく喋ってた。
でも、今日こそはやらなきゃいけない事がある。
切り出せないまま数日経ってしまったから、多少強引だけど仕方ない。



「チャーリーさん目つぶって」

「うん?」

ちゃんと目を閉じたのを確認してから、
チャーリーさんの左手の薬指に、何日も前から用意していた指輪をはめる。

「ん?」

すぐに驚いた様に目を見開いた。
すっごい見られてるけど構わず続ける。

「じゃーん、私の分のお揃いの指輪もありまーす。
チャーリーさんから同じとこにつけて欲しいな!」

わざとらしく明るく、勢いをつけて指輪を取り出した。

「ちょ、ちょっと芽衣ちゃん、それは取っておいた方が良いんじゃないの?」

「……いつまで取っておくの。私が死んじゃうまで?」

「いやそこまでは…」

「でも、私はチャーリーさんと一生一緒にいたいって思っているんだから、そういう事になるけど」

だから、チャーリーさんにつけて欲しいの。

「うーん…………」

予想通り考え込んでしまった。

「チャーリーさんはイヤなの?」

「…芽依ちゃん、僕は人間では無いんだよ?
こういう事しちゃったらさ、この先本当に大事な人が出来た時に後悔する事になったりするかもしれないよ…?
だからよく考えた方が良いよ…」

そんなの今更過ぎる。
明治から帰って来る時だって、帰ってきてからだって、ずっと考えてきた。
その間、チャーリーさんへの気持ちは変わらなかったし、きっとこれからも変わらないんだと改めて確信してる。

「ずーっと考えてきたよ。
私がどれだけチャーリーさんの事が好きで、チャーリーさん以外は考えられないかって事は、一緒にいたんだから分かってるでしょ?」

「………」

「変わるかどうかなんて、人間でも物の怪でも関係無いよ。
さっきの答えて。チャーリーさんはイヤなの?」

「そりゃあ……僕は嬉しいに決まってるよ」

「じゃあ、決まり。はい」

「!
…芽依ちゃん、これって」

渡しただけで気付くなんて、そこはやっぱり流石だ。
根付が割れてしまった時に本当に小さく砕けた破片があったから、
ぱっと見は分からない様に台座に入れてもらっていたのだ。

「…いつでもチャーリーさんと一緒にいるって思いたいの」

「……芽衣ちゃん………。



じゃ、ちょっと待って。

………3、2、1—」

パチンと指を鳴らす乾いた音が響いた。


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